電力需給の緩和が可能な地中熱利用
NPO法人地中熱利用促進協会 理事長 笹田政克氏
今年の夏は2011年の原発事故直後以来久しぶりの節電要請が出ています。主な対策のひとつが冷房の設定温度を28℃にするというものです。原発の再稼働が進まず、再生可能エネルギー電気の伸びがいま一つの中で、ウクライナ関連のエネルギー危機が重なり、電力需給が逼迫しているためでありますが、1年半前も天然ガス輸入の滞りなどにより冬の暖房時に電力需給が逼迫していました。脱炭素に向かう中で、これからも度々襲ってくるであろう電力危機の回避には、再エネ電力の増強とともに、再生可能エネルギー熱(再エネ熱)の活用を考えてほしいと思っています。
業務部門と家庭部門でのエネルギー需要の約半分は熱需要です。冷暖房、給湯の脱炭素化では全て再エネ電気で進めていこうとする電化シナリオが幅をきかせつつあるように見えますが、これらの熱需要には「再エネ電気+再エネ熱の供給」で進めた方が効率よく、再エネ熱が増強できれば、電力危機の負荷が軽減できます。
再エネ熱の中でも有力な熱種の一つである「地中熱」の利用では、空調のピーク電力を低減することができます。このような再エネ熱の効用は、年間の電力消費量を抑えCO2排出量を低減させるだけでなく、電力需要のピーク時にきくので、いま問題となっている電力需給を緩和できるという大きなメリットがあります。これについては東日本大震災後に国土交通省国土技術政策総合研究所でもその効果を確認しています。
EUでは再エネ電気だけでなく再エネ熱にも力を注いでおり、2030年に向けて年率1.1%の割合で再エネ熱を増加させる方針を出しており、再エネの電気と熱で脱炭素を実現しようとしています。
日本も昨年改定された地球温暖化対策計画では、再エネ熱(未利用熱を含む)として、原油換算で1,341万kLの目標が掲げられていますので、具体的な政策面でも電力危機の問題を含め、再エネ電気とともに再エネ熱の利用拡大について、もっと真剣に考えた方がいいと思っています。
夏の電力需給の逼迫を機に、地中熱等の再エネ熱の効用に、いま一度目を向けていただけたらと思っています。(終わり)
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