冷房利用で温められた地下水をさらに太陽熱で加温し、より高温となった温熱を冬期の暖房用井戸周辺の地下帯水層に蓄え、冬期はその温かい地下水を暖房用に利用。一方、暖房で利用して冷えた地下水をさらに融雪の熱源としても利用し、より低温となった冷熱を夏期の冷房用井戸周辺の帯水層に蓄え、夏期に冷房で利用します。
このシステムを同社関連会社の事務所で空調に導入した結果、従来の帯水層蓄熱システム(3本の井戸を冷暖房の熱源として利用するシステム)と比較して初期導入コストの21%削減と年間運用コストの31%削減を達成しました。
また、熱を利用した後に地下に戻すのが難しかった地下水を全量還元できる井戸構築技術もこの実証事業で確立しています。
現在、国において地下水の熱利用に向けて地下水の揚水規制の緩和が検討されています。熱利用後の地下水の還元が大きなポイントの1つに挙げられており、JGDの高効率帯水層蓄熱システムはすでにこれに対応できる技術も確立している点が魅力です。
◆積雪寒冷地でのZEBを実現した高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システム◆
この「高効率帯水層蓄熱システム」を発展させ、冬期の積雪により『ZEB』が難しいと言われている積雪寒冷地域で『ZEB』を実現したのが、2019年度から2024年度にかけて実施したNEDO助成事業「再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発」による「高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システム」の実証です。
この研究開発では、「高効率帯水層蓄熱システム」に太陽光発電設備(30・7kW)、断熱効果を高めた外壁(厚さ300mm)、給湯回路に真空管式太陽熱温水器(84本)、換気装置に全熱交換システム、照明にLED照明、南西側の窓に太陽輻射熱を最大82%遮断する外付ブラインドを追加設置して『ZEB』を目指しました。
◆4年間全年度で運用上も「ZEB」を達成…冷暖房・給湯・冬期の無散水融雪の3つの熱需要を満たす◆
JGDの関連会社である日本環境科学株式会社(山形市高木:JESC)ZEB棟で実証試験が行われ、「冷暖房」・「給湯」・「冬期の無散水融雪」の計3つの熱需要に対応し、ゼネラルヒートポンプ工業と共同開発したヒートポンプ(冷房能力30kW、暖房能力30・1kW、給湯能力30・2kW:以下、HP)を使用しています。
JESC-ZEB棟では、2021年2月からデータを収集。その結果、2021年度から2024年度の年間トータルエネルギー収支は、削減したエネルギー量が消費電力量を上回る結果となり、4年間の全年度を通じて運用上でも『ZEB』を達成しました。
◆需要側に有利な温度の地下水揚水が可能◆
蓄熱のメリットは、需要側に有利な温度の地下水揚水が可能な点としています。
例えば2022年度の計測結果を見ると、地下水初期温度は16℃ですが、冷房開始時は事前の冷熱蓄熱でより冷たい温度(13・3℃)、暖房開始時は事前の温熱蓄熱でより温かい温度(24・4℃)の地下水が得られ、その後は蓄熱の消費(揚水量の累積)に伴い初期温度に向けて収束していっています。
『ZEB』達成の大きなポイントをについて、JGDの桂木聖彦代表取締役は、「夏期の冷房でHPを使わず地下水の冷熱だけで冷房するフリークーリングを行っている点が挙げられるほか、給湯用に導入した真空管式太陽熱温水器で集めた熱を利用する点、通常は冬期に融雪で利用する無散水融雪システムを夏にも運転させて集めた温熱を冬期に暖房で使う井戸周辺の帯水層に貯めておく点です」と述べています。
例えばフリークーリングの効果を計測結果から見ると、フリークーリングとHP冷房をそれぞれ実施した2023年度夏の結果では、フリークーリングのシステムCOP(SCOP)が23・00、HP冷房のSCOPが8・74となっており、エネルギー消費量削減効果の高さがうかがえます。
これらの結果から「積雪寒冷地でも『ZEB』を実現したことなどを踏まえると帯水層蓄熱は『ZEB』との親和性が高いことが示されたと思っています」と自信を覗かせます。
◆積雪寒冷地を重点エリアに高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システム展開◆
JGDは、「ZEBプランナー」でもあります。
「高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システム」の対象について聞くと、「高効率帯水層蓄熱は、『ZEB』との相性が非常に良いです」とし、「東北地方はじめ積雪寒冷地域を重点エリアとし、『ZEB』仕様建物の設計事務所や再生可能エネルギー熱の導入に積極的な設計者、環境意識が高い施主や設計者、CO2排出量削減意識が高い施主や設計者などをターゲットにしていきたいと思っています」としています。
対象となる施設については、建物面積500㎡~1500㎡規模の建物で、特に老健施設や診療所など24時間空調が必要な施設や、防災拠点となる庁舎や消防署などが主な対象になっていくのではないかとしています。
◆高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システムで「面的利用」の実証も開始◆
JGDは、これらの研究成果をさらに発展させる方針で、新たにNEDOの「再生可能エネルギー熱の面的利用システム構築に向けた技術開発」(2024年度から2028年度)において複数の熱需要に対して面的に熱供給する高効率帯水層蓄熱システムに関する研究開発「帯水層蓄熱を中心とした面的熱利用によるZEB及びZEH-Mの運用に係わる技術開発」(ゼネラルヒートポンプ工業と共同提案)をスタートしています。