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【企業概要】

  株式会社地層科学研究所

  代表者:横山 裕之

  所在地:神奈川県大和市大和東3-1-6 JMビル4F

  自社HP: https://www.geolab.jp/ 

【関係する事業分野・主な取り組み】

 地中熱利用分野において、地中熱源ヒートポンプシステムの性能予測・設計支援を行うクラウド版プログラム「Ground Club Advanced」を開発・提供しています。

【独自技術・製品など】

 クラウド環境で利用可能な地中熱システム性能予測ツール。インストール不要で、年間利用による継続的な設計検討に対応

【受注件数】導入実績あり

【対応エリア】全国

【所属団体】

 特定非営利活動法人 地中熱利用促進協会 会員

 一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター 会員

【該当分野での自社・団体の取り組みPRポイント】

 特定非営利活動法人 地中熱利用促進協会主催「第10回地中熱設計講座」において、講義内の設計ツールとして使用されました。地中熱利用設備の設計に携わる技術者の育成を目的とした講座で、実務に即した設計検討に活用されています。

【これから注力する分野】

 利用ニーズの高い施工条件への対応強化として、パイプ種類の追加など機能拡張を予定しています(年内提供予定)。より多様な設計条件に対応可能なツールとして改良を進めています。

【ツールの使用例】

 地中熱交換の設計条件に応じた性能予測結果を可視化

図1 地中熱ヒートポンプシステム性能予測の基本フロー(3 ステップで設定可能)

図2 性能予測プログラムのデータセット画面例(地中熱交換器や運転条件を設定)

図3 性能予測結果の表示例(運転状況や温度変化を可視化)

【事業者への一言】

 本ツールは、北海道大学大学院・長野克則教授(当時)および葛隆生教授の研究成果に基づいて開発された「地中熱ヒートポンプシステム性能予測プログラムGround Club」のクラウド版です。地中熱利用の設計検討において、初期段階から具体的な性能予測を行う際の検討や比較にご活用いただけます。 

2018年に「広報『地中熱』」で紹介した鈴廣蒲鉾本店(神奈川県小田原市風祭)の地下水熱ヒートポンプシステム」を備えたゼロ・エネルギー・ビル(ZEB:改正建築物省エネ法施行以前の規格)となる新本社屋が10年目を迎えました。10年後の今、地下水熱ヒートポンプシステムを含め、運転の状況はどうなっているのでしょうか?鈴廣蒲鉾本店経営管理チーム総務部次長の廣石仁志氏を再訪し、取材しました。【エコビジネスライター・名古屋悟(ECO SEED代表)】

◆これまで取り組んできた省エネ、創エネの集大成◆

鈴廣蒲鉾本店は、創業160年を超える国内屈指の老舗かまぼこメーカーです。

ZEBとして2015年8月に完成した新社屋は、創業150年を記念して建築された3階建て延べ床面積2,134㎡の新築の建物です。

経済産業省の「2014年度住宅・ビルの革新的省エネルギー技術導入促進事業」に採択されて省エネ、再エネ設備の導入を進めました。

「これまで取り組んできた省エネ、創エネの集大成」と位置付けた社屋には、壁や屋根を断熱構造とすることはもちろん、窓にはLow‐e複層ガラス、照明電力削減も行うため自動調光機能を備えたLED照明など省エネルギー(省エネ)設備を備えるほか、太陽光パネル(38kW)など再生可能エネルギー発電や非常時を想定した蓄電池を備えています。

そして電力消費量が最も多い空調設備に地下水を熱源とする外調機、水熱源ヒートポンプシステム、ヒートポンプ給湯器を導入し、消費電力の削減に繋げています。

◆地下水熱利用ヒートポンプシステム…熱利用後はトイレ用水などカスケード利用◆

空調や給湯器の熱源としている地下水は、年間を通じて温度が16℃程度の地下水を70mの井戸1本からくみ上げ、夏は冷房、冬は暖房に利用しています。

1、2階では部屋ごとに水熱源ヒートポンプエアコンが設けられ、オフィススペースとなる3Fは床吹き出し空調が設置されています。また、地下水は職員が利用する社員食堂の給湯熱源としても利用されています。

なお、毎分740リットルくみ上げられて熱利用される地下水は、熱利用後にトイレ用水や散水用水、景観用水など中水としてカスケード利用している点も特徴です。

食品メーカーである鈴廣蒲鉾本店が省エネ、創エネに力を注ぐ理由を改めて廣石氏に聞くと、「かまぼこ等加工食品の製造では、原料の輸送や製造の工程で、冷蔵・冷凍、解凍、加熱の工程がいくつもあります。水やエネルギーを使うからこそエネルギー問題に取り組んでいるのです」と背景を語り、「かまぼこの製造では水をたくさん使うため、以前から井戸を使っています。従来は、製造用の水資源として利用していましたが、さらなる省エネ化を図る過程で熱資源としての役割にも着目し、導入に至りました」と地下水熱ヒートポンプシステムを導入した経緯を解説します。

本社屋での取り組みは、神奈川県の「2015年度かながわ地球環境賞」を受賞するなど各方面で高い評価を受けています。

◆設備の不具合もほぼなくメンテナンスフリーで10年◆

そのシステムの運転状況について聞くと、「これらのシステムの導入による設計削減率は55.5%となっていますが、導入初年度から10年度目を迎えた状況の中、全ての年度で56%以上の削減率を維持し続けています」と廣石氏。運用開始後の3年間、2023年度には60%を超える削減率も達成しています。

直近の2年度はやや削減率が下がっていますが、「夏の猛暑などが続き、室内機の設定温度を下げたことなどが影響していますが、設計削減率は達成しています」と述べ、エネルギー消費削減効果が持続している状況を示しています。

メンテナンス性については、「今後、設備の耐用年数等による更新などが出てくると思いますが、運用開始からこれまではおかげさまでほぼノーメンテナンスと言ってもよい状況です」と述べています。蓄電池のパワーコンディショナーに一部不具合が生じたものの、水熱源ヒートポンプや井戸ポンプなどのその他設備については故障も能力低下もなく安定した運転を継続していると言います。

◆東日本大震災契機に加速した同社の省エネ、創エネの取り組み◆

鈴廣蒲鉾本店が省エネや再エネ利用に積極的なスタンスなのは、2011年3月11日の東日本大震災の経験が大きかったとしています。

エネルギーを多く使うことから従来から省エネには積極的に取り組んでいましたが、東日本大震災当時、計画停電の影響を避けるピークカットの取り組みを強化して一層の省エネを進めた結果、従来から取り組んできた省エネに加えてさらに20%のピークカットを達成。さらに、東日本大震災で被災した東京電力福島第一原子力発電所の事故から、原発に頼らない方針を固め、創エネにも取り組むことになったとしています。

最初に取り組んだのが太陽光発電で、本社近くにある風祭店や同じ敷地にある食事処「千世倭樓」の事務棟などの屋根に太陽光パネルを設置するなど再エネ利用が始まりました。

◆新本社屋だけではない地中熱(地下水熱)利用◆

再エネ熱である地中熱は、レストラン「えれんなごっそ」に地中熱換気システム(年間電力消費量20%削減を達成)を皮切りに利用を広げています。

紹介した新本社屋での地下水熱利用のほかにも2016年度には「恵水工場」でガス吸収式冷温水機の更新に合わせ、「地下水熱ヒートポンプシステム」による全館空調システムを導入。新本社屋とほぼ同じ70mの井戸を熱源に冷暖房システムが導入されています。

この「恵水工場」で熱源利用している井戸は休止していたものを再利用したもので、このような視点も持続可能性を高める上で無駄がなく、注目すべき点です。

さらに、「恵水工場」では、全館空調で熱源として利用した地下水を包装場クリーンルーム導入外気負荷処理の軽減を図るための熱源として二次利用(カスケード利用)するシステムも追加し、さらなる消費電力の削減に繋げているとしています。

団体客が昼食等で利用する施設を持つ風祭店では、井戸水を利用した太陽熱給湯システム(原水として井戸水を使用)も導入し、従来のガス利用に比べてガス使用量20%削減も実現しています。

地下水利用が身近な同社では、地下水を製造用や熱源用としての利用しているほか、景観用水、トイレ用水など多様な地下水利用を進めていますが、まだうまく活用できていない地下水もあるとし、「引き続き地下水の多様な利用を視野に取り組んでいきたいと思っています」と述べており、今後の取り組みにも注目していきたいと思います。

※記事中の写真はECO SEED撮影、図やグラフは鈴廣蒲鉾本店提供

※鈴廣蒲鉾本店ホームページは以下URL。

https://www.kamaboko.com/ 

◆山梨県起点に県内外で地中熱利用システムの設計・施工◆

◆県内外合わせて130件超の地中熱実績◆

温泉及び井戸の掘削を祖業として1961年に創業した株式会社ハギ・ボー(山梨県甲府市上今井町740-4、萩原利樹代表取締役社長:旧社名・株式会社萩原ボーリング:2020年に現社名へ変更)は、2008年から地中熱利用の事業化に向けた取り組みを開始し、2011年度の地熱利用ヒートポンプシステム導入皮切りに、地中熱利用システムの設計・施工業務を事業化しています。これまでに県内で企画/設計/施工は50件あまり、県外は地中熱交換器の掘削を主体として80件以上の施工を手掛け、甲斐の国・山梨県を起点に地中熱利用システムの設計・施工を広げています。

◆建物の空調や農業ハウスなどで省エネ、CO2排出量削減に貢献◆

創業以来60年以上にわたり、「地球環境との共存」をテーマに掲げ、水と大地に向き合い、信頼される確かな技術とサービスを地域社会に提供し、後世へと継承していくことを理念としている同社にとって温室効果ガスの大幅な削減が可能な再生可能エネルギー熱である地中熱利用システムは、井戸掘削などの豊富な経験が生かせる新たな取り組みとして事業の柱の1つとなっています。

同社が手掛けた事例では、本社屋と同じく建物の空調として自治体庁舎や病院、保育園、レクリエーション施設などがあるほか、近年では井水利用の一環として井水熱源のヒートポンプの展開に力を入れています。

※同社事例はhttps://www.hagibor.co.jp/gshp-case_study/ 

◆井戸の費用対効果向上を図る地下水の複合利用を提案◆

同社が立地する山梨県は、地下水の賦存量に恵まれた地域。同社で地中熱利用システムを手掛けて同社の萩原利樹代表取締役は「近年、オープンループ方式での施工が多く、井水はエネルギーとしての利用以外に、雑用水を始めとしてグランド/緑化散水や消防水として多目的な利用を提案させていただき、採用されています」と最近の傾向について語り、「近年では避難施設への水源としての防災井戸を普段使いいただくために空調や散水やプール用水としての使用することで、井戸の費用対効果の向上を図る提案から導入に至った案件もあります」と地下水の複合的な利用を行っているケースについても触れています。

萩原氏は、「当社のストロングポイントは長年にわたる井戸やボーリング等のバックデータを活用しながら、井戸提案を行えるところです」と述べ、導入者のベネフィットが格段に高まる同社の提案は今後さらに注目を集めるでしょう。

その一例として「ロジパーク山梨中央 B‣C街区 新築工事」があります。建物は物流倉庫として県内でも最大級の規模の施設です。

施主は労働環境改善のためにターミナルの荷捌きエリアに空調設備の導入を検討される際、環境負荷の低減とランニングコストを重要視しています。

この要望に対して、当該地の豊富な地下水を利用し、水冷式ヒートポンプに拠るビルマルチ方式の空調をスポットダクトで効率的に行っています。

熱交換後の井水は地下への還元を主としながら、緑地帯への潅水と冬期には車両登坂路への散水融雪にも利用しています。

これらに因り地下水資源の保全と井水利用の費用効果を向上させています

◆電気のピークシフトなど顧客ニーズに合ったより良い提案も◆

また、「顧客ニーズに合ったより良い提案を行っていくことも大切」とし、調理や洗浄で大量に使うお湯を沸かすため多くの電力が必要となるオール電化が進む給食センターへの提案を行った事例もあります。同社ではこの電力使用量を抑制させるため電気のピークシフトを行い、夜間電力を使うことで電気代を削減する提案等も行っています。

「地中熱利用システム単体を普及させるだけでなく、ユーザーの実情に合わせ、その他エネルギーとの組み合わせることが大切だと考えています。例えば、すべてを地中熱で賄うのではなく、初期費用や施設の稼働状況を考慮して、ユーザーが満足できるプランを提示していく事が大切だと考えています」と萩原氏は語ります。

◆高速、低騒音・低振動の掘削機で井戸工事◆

施工の面でも同社は信頼ある体制を築いています。

ロータリーバイブレーション式を採用した高速掘削機である「ソニックドリル」を3台(SD100とSD175、SD-175HB)所有しています。この掘削機は地中熱交換器の施工で高い能力を発揮します。

回転と打撃で掘削するロータリーパーカッション式に比べて騒音・振動がかなり抑えられ刃先による地盤への対応力も備えています。特に掘削速度が速く、スケジュールがタイトな建築工事においても安定した工事が可能です。最新の175HBでは200mm口径仕上げを念頭に置いて、また標準のリングビット以外のビットへの交換も可能として掘削機メーカーと検討を重ね水井戸などへの対応力を向上させています。(上の写真はソニックドリルによる工事の模様、下の写真は、SD-12.3/4”ロッド×340㎜リングビット〈中硬岩用〉)

◆井戸の多目的利用を提案し、顧客の課題解決の一助となる企業へ◆

今後の展開について萩原氏は「井戸の多目的利用として、先の防災井戸の活用や、工場などで生産設備用として既にある井戸水のエネルギー利用の提案を図るなど、お客様の課題解決の一助となる企業として邁進していきたいと思っています」と語っており、環境面だけでなく防災や事業継続性など持続可能な開発目標(SDGs)に値する同社の取り組みに今後も注目が集まりそうです。

※記事中の写真はすべて㈱ハギ・ボー提供

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◆TSKさんいん中央テレビグループが運営する中国地方最大規模のいちご狩り観光農園◆

地下水の熱利用を含むエネルギーの地産地消で自立した運営を目指す中国地方最大級のいちご狩り観光農園が、2026年1月に島根県出雲市内にオープンしました。この農園は、TSKさんいん中央テレビグループの株式会社TSK農縁(島根県松江市向島町1401、清田睦人代表取締役社長)が運営する「出雲ICHIGO縁」(出雲市大社町北荒木1521-4)です。このほど、現地を訪ね、農園の柱となる再生可能エネルギーを組み合わせた地産地消のエネルギーシステムについて取材する機会を得ました。(エコビジネスライター・名古屋悟)

◆出雲大社から2kmほどに立地する農業体験型テーマパーク◆

「出雲ICHIGO縁」は、日本最古級の神社である出雲大社の近くにオープンしたいちご狩りの観光農園。農業施設は農林水産省の農山漁村振興交付金に基づく島根県出雲市の 農山漁村発イノベーション整備事業(定住促進・交流対策型)地域活性化計画によって整備され、エネルギーシステムは環境省の二酸化炭素排出抑制対策事業費補助金「地域における脱炭素化先行モデル創出事業」によって整備されました。

地域活性化計画によると、大社地域は出雲大社「平成の大遷宮」(2008年~2019年)を契機に毎年多くの観光客が訪れていますが、農業従事者の高齢化や担い手不足に加え、 古くから取り組まれていたブドウハウスの老朽化も相まって遊休農地化が加速度的に進み、農業の衰退や観光地としての景観保全が課題になっているとしています。

こうした状況を踏まえて、「遊休農地を活用したイチゴの収穫体験農園を整備したほか、関連事業として直売を含む物販・飲食施設を整備し、農業体験型テーマパークとして、市の観光施策『365日楽しめる出雲』創出事業と連携して新たな観光資源とすることで、通過型観光から滞在型観光への移行につながる多様な交流人口を創出したいと考えています」と株式会社TSK農縁の津森仁常務取締役は話します。

この施設を整備した株式会社TSK農縁は、2023年4月に設立されたTSKさんいん中央テレビグループの農業法人で、農業離れが進む中、農地の有効活用や耕作放棄地の再生、農業の担い手を増やしていくことを目的に事業を展開しています。1月にオープンした 「出雲ICHIGO縁」のほかにも、雲州人参などを栽培する八束町プロジェクトやICT管理による生キクラゲ栽培なども手掛けています。

「出雲ICHIGO縁」は、中国地方最大規模で約2haの敷地に栽培面積7,500㎡のハウス2棟があり、宙に浮く可動式空中プランターに5万株のいちごが実り、来場者を楽しませています。いちごは、「ベリーポップすず」、「よつぼし」、「スターナイト」の3品種を栽培しています。

いちご狩りのほかにもいちごやいちごを使用したスイーツを購入できるショップやテイクアウト専門のカフェなども併設し、スイーツを楽しみたい人にも魅力的な施設になっています。

◆複数再生可能エネルギーを組み合わせエネルギーの地産地消を実現◆

その農園を支えているのが再生可能エネルギーで、「エネルギーの地産地消」を掲げて多様な地域のエネルギー資源を活用している点が大きな特徴です。

地元の林業で発生する間伐材などを燃料として発電と廃熱有効活用を行う「木質バイオ マスコージェネレーションシステム」、太陽光発電パネルと太陽熱集熱による温水回収システムを一体化させた「ソーラーハイブリッドシステム」、帯水層を蓄熱層として利用する 「帯水層蓄熱ヒートポンプシステム」を施設のエネルギー供給基盤とし、電力融通・常用 防災兼用型の「定置型蓄電池システム」を含め、「電力自営線」と「熱融通導管」で構内   接続することで、多様な再生可能エネルギーの電力と冷・温熱を複合的に融通活用する 「グリーン・グリッド」を構築して最適融通制御を行うことで、自立したエネルギーシステムで運営しています。

また、この農園は「常用防災兼用」の考えで整備されている点も特徴で、「平常時の脱炭素化はもちろんですが、停電時にも電力や冷・温熱を継続利用できる設計になっており、緊急時には来場者や地域の方々の安全・安心にもつなげたいと考えています」と津森氏は施設のもう一つの特徴を解説します。

これらシステムの導入により、従来普及している重油ボイラー等に比べて温室効果ガスであるCO2を80%以上削減する目標としています。

◆システムの中核をなす木質バイオマス◆

システムを構成する再生可能エネルギーシステムのうち、各システムの柱となっている のが、「木質バイオマス・コージェネレーションシステム」(定格発電出力40kW、排熱  回収冷房能力35kW、排熱暖房能力100kW)です。

地元林業の山林管理で出る未利用の間伐材を破砕してチップ化し、木質チップから燃料 ガスを発生させてガスエンジン発電を行うとともに、発電時に排出される排気ガスの熱を利用して温水を供給するコージェネレーション(熱電併給)システムになっており、回収 した温水は吸収式冷温水器を通じて冷水や温水を作って冷暖房熱源として利用しています。

「木質バイオマスの地産地消を通じ、施設の脱炭素化を実現しながら森林・里山の維持発展にも貢献していくという考えのもと、取り組んでいます」と津森氏は話します。

◆地中のエネルギーを効率的に生かす帯水層蓄熱ヒートポンプシステム◆

「お客様が気付かないまま足下でスマートな役割を果たしているのが帯水層蓄熱ヒートポンプシステムです」と津森氏が紹介する「帯水層蓄熱ヒートポンプシステム」は、地下の帯水層を蓄熱層として活用するもので、施設の冷暖房に利用しています。

2本の井戸を冬期と夏期で交互に利用し、地下水の流れの遅い地下帯水層に冬期の暖房 運転時に生じる冷熱、夏期の冷房運転時に生じる温熱を、それぞれ蓄える仕組みになっています。

暖房時は夏期の冷房運転で温められた地下水をくみ上げて暖房熱源に利用し、冷えた地下水は冷房用の井戸に還元します。逆に、冷房時は冬期の暖房で冷えた地下水をくみ上げて 冷房熱源に利用し、温まった地下水は暖房用の井戸に還元します。こうすることで、冷暖房に必要となるエネルギーを、再生可能エネルギーで地産地消できる仕組みになっています。

くみ上げた地下水を熱源に水冷式ヒートポンプチラー(冷房能力286kW、暖房能力315kW)を介して施設の冷暖房を行っています。この水冷式ヒートポンプチラーには、低GWP冷媒が使用されており、メーカーの従来機と比べてCOP(エネルギー消費効率)が約10~20%向上しています。

冷房用の井戸は敷地北側に設置された駐車場内、暖房用の井戸は施設南側に配置され、深さは各100mで、それぞれの井戸は140m離れており、互いに熱干渉しない距離を保って整備されています。

当初は「木質バイオマスコージェネレーションシステム」と「ソーラーハイブリッドシステム」で運用する考えだったそうですが、熱需要をすべて賄うことが難しいことが分かり、現地で活用できる地産地消型の再生可能エネルギーとして、地中熱の採用を検討したそうです。

その地中熱も当初は一般的なクローズドループ(地中に埋設した密閉パイプ内に封入された流体を循環させ、地中の温度を間接的に回収する方式)を検討したものの、需要を満たすための井戸が数多く必要になることから既存のボーリングデータを参照し、地下水を熱源として利用できることが分かり、帯水層を蓄熱層として利用する方式を選定したとのことです。

◆ソーラーハイブリッドシステム◆

「ソーラーハイブリッドシステム」は、太陽光発電パネルに太陽集熱による温水回収システムを組み合わせた先進PVTパネルを採用しています。

パネルは、帯水層蓄熱ヒートポンプなどが格納されている機械室、木質バイオマスコージェネレーションシステムが格納されている施設の屋根にそれぞれ設置されています。パネルはそれぞれ100枚で発電能力60kW、採熱暖房能力160kWとなっています。発電パネル部で熱を回収してパネル温度が下がることで、発電効率を向上させながら回収した熱を給湯などに有効利用する太陽エネルギーの複合利用により、従来のパネルよりもCO2削減効果が20%向上しているとしています。

◆常用防災兼用の要となる定置型蓄電池システム◆

常用防災兼用を図る上で重要になるのが、「定置型の大容量蓄電池システム」です。平常時は構内で電力を融通供給するための電力自営線と、余剰電力の充放電を行う蓄電池を活用して電力需要が少ない時間には余剰電力を蓄電し、電力需要が多い時間には蓄電した電力を放電供給することで電力需給を平準化します。一方、停電・災害時は太陽光発電と蓄電池を活用し、非常用電力を供給します。

◆効率的な運転に欠かせないグリーン・グリッド制御盤◆

これらの設備を効率よく運用するために欠かせないのが、「グリーン・グリッド制御盤」です。各施設の電力や冷温熱は、用途や規模で差異があるほか、季節や時間帯によっても変化します。

多様な施設で構成される構内での再エネ地産地消を実現するため、「再エネの電力と熱を 施設間で融通し、過不足を充放電や蓄・放熱で賄う、再エネの地産地消を最大化することで、エネルギーの自立化を図っています」としています。

◆生産性と品質向上にICTも駆使◆

いちごの生産そのものもICT(情報通信技術)を導入。温度や湿度、日射量などをリアルタイムで測定するセンサーをハウス内に設置し、イチゴの生育に最適な環境を自動制御しています。ICTを活用することで、生産性と品質の向上を実現していく考えです。

◆エネルギー地産地消や地域の観光資源等に加え、環境教育の場としての役割も視野◆

「出雲ICHIGO縁」は12月から5月の期間で営業。冬期の観光需要を底上げする役割も期待されています。年間4~6万人の来場者を見込んでおり、今年も4月からゴールデンウイークにかけての週末はすでに予約が埋まっているとしています。

また、多様な再生可能エネルギーを地産地消する、先進技術を駆使したエネルギーシステムへの関心は高く、国の機関等をはじめ多くの視察者が訪れているとのことです。

津森氏は最後に「エネルギーの地産地消、常用防災兼用の施設、地域の観光資源として地域に貢献していくことに加え、今後、市内の教育機関との連携も深め、環境教育の場としての活用なども進めていければと考えています」と述べており、TSK農縁の取り組みは今後も注目が集まりそうです。

※記事中の写真のうち、井戸の写真は日本地下水開発㈱提供。その他の写真は、ECO SEED撮影

【出雲ICHIGO縁へのアクセス】

出雲大社より車で約7分

山陰自動車道「出雲IC」より車で約15分

一畑電車大社線「浜山公園北口駅」より徒歩約10分

出雲縁結び空港からレンタカーで約40分

「出雲ICHIGO縁」のホームページは以下URLとなります。

https://www.izumoichigoen.jp/ 

◆活躍の場が広がる日本地下水開発の帯水層蓄熱システム◆

地下水の熱利用拡大を視野に地下水揚水規制緩和に向けた検討が本格化する中、夏用と冬用の井戸で冷温熱を使い分ける帯水層蓄熱が注目されています。とりわけ日本地下水開発株式会社(JGD:山形県、桂木聖彦代表取締役)が開発した「高効率帯水層蓄熱システム」は帯水層蓄熱をベースに積雪寒冷地でネット・ゼロ・エネルギー・ビル(『ZEB』)を実現し、『ZEB』を目指す施主にとって注目すべき再生可能エネルギー熱利用技術です。実証により帯水層蓄熱と『ZEB』の親和性の高さが証明され、建物間で熱融通等を行う面的利用の実証も始まっているほか、農業分野での導入も始まり、注目されます。(エコビジネスライター・名古屋悟)

◆ZEB実現のベースとなるJGD高効率帯水層蓄熱システム◆

帯水層蓄熱が『ZEB』実現に効果があることを知る上でまず重要なのは、同社が開発した「高効率帯水層蓄熱システム」です。

このシステムは、NEDO事業「再生可能エネルギー熱利用技術開発」(2014~2018年度)で確立した国内初のシステムで、2本の井戸を冬期と夏期で交互に利用し、地下水の流れの遅い地下帯水層に冬期の冷熱、夏期の温熱をそれぞれ蓄える仕組みです。

冷房利用で温められた地下水をさらに太陽熱で加温し、より高温となった温熱を冬期の暖房用井戸周辺の地下帯水層に蓄え、冬期はその温かい地下水を暖房用に利用。一方、暖房で利用して冷えた地下水をさらに融雪の熱源としても利用し、より低温となった冷熱を夏期の冷房用井戸周辺の帯水層に蓄え、夏期に冷房で利用します。

このシステムを同社関連会社の事務所で空調に導入した結果、従来の帯水層蓄熱システム(3本の井戸を冷暖房の熱源として利用するシステム)と比較して初期導入コストの21%削減と年間運用コストの31%削減を達成しました。

また、熱を利用した後に地下に戻すのが難しかった地下水を全量還元できる井戸構築技術もこの実証事業で確立しています。

現在、国において地下水の熱利用に向けて地下水の揚水規制の緩和が検討されています。熱利用後の地下水の還元が大きなポイントの1つに挙げられており、JGDの高効率帯水層蓄熱システムはすでにこれに対応できる技術も確立している点が魅力です。

◆積雪寒冷地でのZEBを実現した高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システム◆

この「高効率帯水層蓄熱システム」を発展させ、冬期の積雪により『ZEB』が難しいと言われている積雪寒冷地域で『ZEB』を実現したのが、2019年度から2024年度にかけて実施したNEDO助成事業「再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発」による「高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システム」の実証です。

この研究開発では、「高効率帯水層蓄熱システム」に太陽光発電設備(30・7kW)、断熱効果を高めた外壁(厚さ300mm)、給湯回路に真空管式太陽熱温水器(84本)、換気装置に全熱交換システム、照明にLED照明、南西側の窓に太陽輻射熱を最大82%遮断する外付ブラインドを追加設置して『ZEB』を目指しました。

◆4年間全年度で運用上も「ZEB」を達成…冷暖房・給湯・冬期の無散水融雪の3つの熱需要を満たす◆

JGDの関連会社である日本環境科学株式会社(山形市高木:JESC)ZEB棟で実証試験が行われ、「冷暖房」・「給湯」・「冬期の無散水融雪」の計3つの熱需要に対応し、ゼネラルヒートポンプ工業と共同開発したヒートポンプ(冷房能力30kW、暖房能力30・1kW、給湯能力30・2kW:以下、HP)を使用しています。

JESC-ZEB棟では、2021年2月からデータを収集。その結果、2021年度から2024年度の年間トータルエネルギー収支は、削減したエネルギー量が消費電力量を上回る結果となり、4年間の全年度を通じて運用上でも『ZEB』を達成しました。

◆需要側に有利な温度の地下水揚水が可能◆

蓄熱のメリットは、需要側に有利な温度の地下水揚水が可能な点としています。

例えば2022年度の計測結果を見ると、地下水初期温度は16℃ですが、冷房開始時は事前の冷熱蓄熱でより冷たい温度(13・3℃)、暖房開始時は事前の温熱蓄熱でより温かい温度(24・4℃)の地下水が得られ、その後は蓄熱の消費(揚水量の累積)に伴い初期温度に向けて収束していっています。

『ZEB』達成の大きなポイントをについて、JGDの桂木聖彦代表取締役は、「夏期の冷房でHPを使わず地下水の冷熱だけで冷房するフリークーリングを行っている点が挙げられるほか、給湯用に導入した真空管式太陽熱温水器で集めた熱を利用する点、通常は冬期に融雪で利用する無散水融雪システムを夏にも運転させて集めた温熱を冬期に暖房で使う井戸周辺の帯水層に貯めておく点です」と述べています。

例えばフリークーリングの効果を計測結果から見ると、フリークーリングとHP冷房をそれぞれ実施した2023年度夏の結果では、フリークーリングのシステムCOP(SCOP)が23・00、HP冷房のSCOPが8・74となっており、エネルギー消費量削減効果の高さがうかがえます。

これらの結果から「積雪寒冷地でも『ZEB』を実現したことなどを踏まえると帯水層蓄熱は『ZEB』との親和性が高いことが示されたと思っています」と自信を覗かせます。

◆積雪寒冷地を重点エリアに高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システム展開◆

JGDは、「ZEBプランナー」でもあります。

「高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システム」の対象について聞くと、「高効率帯水層蓄熱は、『ZEB』との相性が非常に良いです」とし、「東北地方はじめ積雪寒冷地域を重点エリアとし、『ZEB』仕様建物の設計事務所や再生可能エネルギー熱の導入に積極的な設計者、環境意識が高い施主や設計者、CO2排出量削減意識が高い施主や設計者などをターゲットにしていきたいと思っています」としています。

対象となる施設については、建物面積500㎡~1500㎡規模の建物で、特に老健施設や診療所など24時間空調が必要な施設や、防災拠点となる庁舎や消防署などが主な対象になっていくのではないかとしています。

◆高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システムで「面的利用」の実証も開始◆

JGDは、これらの研究成果をさらに発展させる方針で、新たにNEDOの「再生可能エネルギー熱の面的利用システム構築に向けた技術開発」(2024年度から2028年度)において複数の熱需要に対して面的に熱供給する高効率帯水層蓄熱システムに関する研究開発「帯水層蓄熱を中心とした面的熱利用によるZEB及びZEH-Mの運用に係わる技術開発」(ゼネラルヒートポンプ工業と共同提案)をスタートしています。

高効率帯水層蓄熱システムを中心とした再エネ熱をZEBならびにZEH-Mといった複数施設で利用する面的熱利用システムの熱源とし、熱負荷の平準化、熱融通、熱利用を高度化することで、2028年度に再エネ熱利用システムの導入コストを2024年度比で25%削減、ランニングコストを25%削減することを目標としているとしています。

実証は本社に隣接する敷地でZEH-Mを目指す社員寮(木造2階建て約600㎡:1K15部屋)とZEB改修した山形事務所(鉄骨平屋建て約200㎡)の2棟で行う考えです。

共通の帯水層蓄熱システムを2棟で利用する形で、「高効率帯水層蓄熱システム」をベースに、太陽光発電設備、断熱効果を高めた外壁、給湯回路に真空管式太陽熱温水器などを導入する予定です。

社員寮は夜から朝、山形事務所は日中に電気や熱の需要が集中するため、熱需要の分散が期待できますが、「ZEH-M」社員寮には風呂等の熱需要が大きい点がZEBとは異なる点で、給湯の消費エネルギーをどの程度まで削減することができるかが今後のポイントになるとしています。

社員寮は15部屋ありますが、5部屋を高効率帯水層蓄熱システムによるHP給湯、5部屋をエコキュート、5部屋をガス給湯とし、比較試験を行う計画になっており、実証の結果が注目されます。

2025年内に山形事務所のZEB改修、高効率帯水層蓄熱システム用の井戸2本の工事を終えており、今年5月には社員寮の建築工事を着工し、その後、2026年秋には竣工予定で、2棟での本格的な実証を開始する見込みとなっています。

なお、同社による帯水層蓄熱システムは公共・民間含めこれまでに11施設で導入され、このうち2施設が高効率帯水層蓄熱システムとなっています。

◆農業分野でも導入始まった帯水層蓄熱システム…出雲の地で◆

帯水層蓄熱システムは、建物だけでなく農業分野での導入も始まっています。

JGDの帯水層蓄熱システムを導入したのは、TSKさんいん中央テレビグループの農業法人である株式会社TSK農縁(島根県松江市向島町140-1、清田睦人代表取締役社長)が2026年1月に出雲市内に開園した「出雲ICHIGO縁」(島根県出雲市大社町北荒木1521-4)です。

「出雲ICHIGO縁」は、約2haの敷地に栽培面積7,500㎡のハウス2棟からなる中国地方最大規模のいちごのハウス栽培施設です。

非常に大型の観光農園で、熱需要が非常に大きな施設です。

TSK農縁では、いちごの観光農園を作るにあたり、エネルギーの地産地消を掲げ、地域のエネルギー資源である木質バイオマスコージェネレーションや太陽光発電・熱ハイブリッドシステムの利用を当初から視野に入れていましたが、熱需要をすべて賄うことが難しいことから、その他のエネルギー資源も検討。その結果、同地に豊富に存在する地下水にたどり着き、地下水の流れる速度などから熱需要の不足分を帯水層蓄熱システムで補うことになったとしています。

春から夏は帯水層蓄熱を利用してヒートポンプによる施設冷房を行いながら冬期用の井戸に蓄熱し、秋から冬に蓄熱した温熱を利用してヒートポンプによる施設暖房を行う計画になっています。

また、「出雲ICHIGO縁」の特徴として、この帯水層蓄熱によるヒートポンプシステムの駆動に必要な電力は、木質バイオマス発電など再生可能エネルギー発電で賄うことになっており、グリーンな冷暖房を実現している点も特徴になっています。

積雪寒冷地での『ZEB』を実現し、建物以外で用途でも導入が始まったJGDの高効率帯水層蓄熱システムは、今後の動向も注目されます。

 ※記事中の図は、すべてJGD提供

 ※「出雲ICHIGO縁」の詳細は別途紹介します。

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◆環境省がビル用水法の技術基準見直し視野に検討本格化◆

地中熱利用を巡る動向の中で現在、クローズドループよりも効率の良いオープンループ(地下水を揚水して熱源利用)タイプに関連したシステム普及の拡大に向けた規制緩和の議論が始まっています。

これは、帯水層蓄熱など地下水の熱利用促進を視野にビル用水法の施行規則の改正を行う方針を固めた環境省の動きで、「建築物用地下水の採取の規制に関する技術的基準等に係る検討会」での検討を開始しています。

地下水の熱利用は、地中に埋設した熱交換器内に流体を循環させて間接的に地中の熱を利用するクローズドループ方式に比べて、地下水を直接熱源とするため、井戸1本あたりの採熱量が多く、非常に効率的ですが、過去の地盤沈下を踏まえた地下水の揚水を規制するビル用水法による規制が地域によってはあり、簡単に利用できない等の課題がありました。

◆「地下水還元型地中熱利用システム」◆

今回の規制緩和の検討では、揚水を規制しているビル用水法の技術的基準を見直し、現在、揚水が規制されている地域でも要件を満たせば、地下水を揚水して熱利用することを可能とするもので、2月に開かれた第1回会合では、事務局が案を示し、「揚水した地下水を同一帯水層に全量還元する構造を有すること」、「揚水量及び揚水を行う帯水層の周辺の土質の状況等を勘案し、地下水位・地盤高が著しく変化する恐れがないこと」、「稼働中におけるモニタリングの実施等の地盤沈下の防止に必要な措置を行うこと」を要件として『地下水還元型地中熱利用システム』の導入を可能にする考えとしています。

要件を満たすための検討手法やそれぞれの数値的基準は別途策定するガイドラインで示す方針で、「揚水した地下水を同一帯水層に全量還元する構造を有すること」に関しては全量還元するための井戸掘削方法や井戸構造等を示す方針です。

「揚水量及び揚水を行う帯水層の周辺の土質の状況等を勘案し、地下水位・地盤高が著しく変化する恐れがないこと」に関しては、事前の土質ボーリング・サンプリング・土質試験・現場透水試験等を示すほか、システム運用による地盤影響評価手法や数値基準を、周辺への配慮が地下水質・水温等に必要な場合、還元時の地下水の温度・水質に著しい変化が認められないことの確認方法等を示す考えになっています。

また、「稼働中におけるモニタリングの実施等の地盤沈下の防止に必要な措置を行うこと」に関連しては、必要なモニタリング項目等や揚水井や還元井、追加の観測井の設置などモニタリング地点について示す考えとしています。

◆改正施行規則施行は2027年秋を視野に◆

改正施行規則の施行は2027年秋を目指すとし、2026年秋にも改正施行規則の公布、2026年度内にもガイドラインを策定する予定としています。

環境省は今後、第1回検討会での意見等を踏まえた改正施行規則の案等について2026年度早々にもパブリックコメントを実施し、2026年夏に同年度第1回検討会、同年秋に第2回検討会を開き、施行規則の改正、ガイドラインの策定を進めていく方針としています。

◆民間団体でも勉強会◆

また、環境省の動きを踏まえ、民間団体でも呼応する動きが始まっています。

一般社団法人全国さく井協会とNPO法人地中熱利用促進協会は3月6日に「カーボンニュートラルに向けた地下水の適正熱利用勉強会~用水2法の規制緩和の可能性~」を開催。

大阪市環境局環境施策部エネルギー政策担当課長の大谷直人氏が『大阪市の帯水層蓄熱の普及促進に向けた取組』を、環境省水・大気環境局環境管理課環境汚染対策室室長補佐の松井達氏が『地下水採取規制の合理化に向けた検討状況』をテーマにそれぞれ講演したほか、質疑応答が行われ、活発な議論が交わされました。

◆補助事業情報◆

なお、『地下水還元型地中熱利用システム』の導入に当たって利用可能な補助事業は以下のようなものがあります。

【民間向け補助金】

▼民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業

▼地域共生を目指したデータセンター脱炭素化設備導入支援事業

▼建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業

▼住宅の脱炭素化促進事業

【公共向け補助金】

▼地域脱炭素推進交付金

▼地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共避難施設・防災拠点への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業(地域レジリエンス事業)

 ※以降のページでは、地下水の熱利用で注目される事例等を紹介します。

環境省水・大気環境局環境管理課環境汚染対策室・鈴木清彦室長に聞く

地中熱編


土壌・地下水環境分野を巡っては、2024年9月に土壌汚染対策法の見直しに向けて始まった中央環境審議会における審議が大詰めを迎えているほか、依然として社会的関心が高まっている有機フッ素化合物(PFAS)への対応の行方などが注目されています。また、2050年ゼロカーボン社会実現に向けた動きも一層関心が高まっており、再生可能エネルギー熱利用である地中熱利用への期待も高まっています。土壌・地下水汚染や地中熱利用等に関する環境行政が今後どのように進むのか。現状や今後の展望について、環境省水・大気環境局環境管理課環境汚染対策室の鈴木清彦室長に話を聞きました。(エコビジネスライター・名古屋悟)

※この記事は2026年1月5日に発行した「Geo Value」2026年新年号に掲載したもののうち、地中熱利用施策の部分を抜粋したものです。


◆普及拡大に向けて引き続きの補助金、さらなる普及啓発への広報活動強化◆

――土壌・地下水は地中熱等の貴重な熱資源としての価値もあり、2050年ゼロカーボン社会を目指す上で、地中熱利用の拡大への期待も集まっていますが、現状はいかがでしょうか?

「地中熱は土地があればおおむねどこでも利用できる使い勝手の良い再生可能エネルギーであり、潜在的なポテンシャルはとても大きいものですが、太陽光発電など再生可能エネルギー発電に比べて十分利用できていない状況だと思っています。

周辺環境への影響を考えても、地中熱利用は周辺への影響が極めて少ない低環境負荷な再生可能エネルギーであると認識しています。

環境省では2010年度から2年ごとに全国の地中熱利用設備の設置状況を調査しています。最新の2024年度の結果によると、地中熱利用における累計設置件数は全国で9,188件あり、2022年度調査から427件増加しました。このうち利用方法別で最も多いのはヒートポンプ方式の3,436件であり全体の37.4%を占めます。次いで水循環の2,342件で25.5%、空気循環の2,293件で25.0%、熱伝導の877件で9.5%、ヒートパイプの240件で2.6%となっています。(https://www.env.go.jp/water/jiban/survey.html )

環境省ではこれまでも導入時のコスト負担を軽減する補助事業による支援や低コスト化等技術の実証事業、地中熱利用状況調査結果を反映したパンフレットの作成などを行っていますが、普及拡大の動きが鈍いのは、非常にもったいない状況だと感じています」

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――導入コストの軽減につながる2026年度の補助事業についてはいかがですか?

「2026年度予算はまだ成立していませんが、予算案にも『民間企業等における再エネの導入及び地域共生加速化事業』や『住宅の脱炭素化促進事業』、『建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業』などを盛り込んでいますので、予算成立後、ご利用いただければと思っております。(※予算案示された場合にURLを記入)

一方で、環境省としては補助事業や低コスト化を視野に入れた技術実証等を通じて地中熱利用を支援してきましたが、導入コストが依然として高いと認識されている点や知名度が低い点が普及拡大に向けた課題になっていると考えています。

業界関係者の努力により低コスト化はだいぶ進んだと思いますが、一般での知名度は低いままであり、地中熱利用の知名度向上は大きな課題と考えています」

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◆延べ1,400名が参加している地中熱懇談会◆

――地方自治体等での知名度は上がっていますが、一般ではやはり残念ながら知名度の低さは感じます。こうした点から環境省では2024年度から『再生可能エネルギー熱「地中熱」に関する懇談会』を開催していますが、これまでの状況はいかがですか?

「環境省では業界や立場を超えた多くの皆様に地中熱について関心を持っていただきたいという思いから、2024年度に『再生可能エネルギー熱「地中熱」に関する懇談会』を立ち上げ、今年度2025年度も継続して実施しています。会場参加だけでなくより幅広く参加いただきたい考えからオンラインでの参加も募り、これまでに延べ1,400名の方々にご参加いただいております。

2025年度は、対象とする施設を絞り、それぞれの分野に最適化した地中熱の導入方法について理解を深めるべく、会ごとにテーマを設定しています。

6月に開催した2025年度第1回では『工場』をテーマに導入例などを、9月に開催した第2回(写真:ECO SEED撮影)では『地産地消』をテーマに地方自治体による導入例などをそれぞれ紹介していただきました。

この2回の懇談会は、動画や資料を公開しておりますので、ぜひご覧いただければと思っております。(https://www.env.go.jp/water/jiban/page_00001.html

また、11月には第3回として「医療施設における地中熱の役割」をテーマに、病院の脱炭素化と経営改善の2つの視点から地中熱利用設備を検討する場も設けました。この第3回は対象者を限定しているため、会場参加のみとして開催しましたが、有意義な意見等を頂戴することができました。

2025年度の懇談会は年明けにもう一度、開催する機会を予定しています。決定しましたら改めて環境省ホームページ等を通じてご案内しますので、ぜひご参加ください。

また、2026年度予算はまだ成立していませんが、2026年度も引き続き懇談会は開催していきたいと考えております」

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――知名度の向上が課題とする中、情報収集のツールとしてどのようなものがありますか?そして2026年度はどのように展開するのでしょうか?

「『地中熱ポータル』(https://www.env.go.jp/water/jiban/thermal.html )を開設しています。ここでは、先にお話した懇談会の情報や地中熱利用状況調査の結果などのほか、国内の地中熱導入例やインタビュー、ZEBにおける地中熱導入例などを公開しているほか、地中熱読本などの冊子やパンフレットをダウンロードできます。地中熱動画も公開していますので、ぜひご活用いただければと思います。

また、2026年度は懇談会に加え、さらに広報施策を充実させていきたいと考えています。地中熱を導入する発注者側のメリットとなるような仕組みや、広く知っていただくためのコラボレーションなども視野に入れ、取り組んでいければと思っています」

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◆地中熱利用のヒートアイランド現象緩和効果に改めて焦点を◆

――省エネ、省CO2等のメリットはこれまでにも環境省も業界も多く発信してきましたが、なかなか壁が破れませんね。

「私は『ヒートアイランド現象』に改めて焦点を当ててもいいのではないかと考えています。

昨年の夏もそうでしたが、近年は夏場の高温環境が顕著であり、熱中症患者も増加の一途をたどっています。厚生労働省がまとめている都道府県別にみた熱中症による死亡数の推移によると、全国で2021年度755人、2022年度1,477人、2023年度1,651人と増加し、2024年度には2,160人と熱中症による死者は2,000人台に達しています。

地球温暖化による温度上昇に加え、特に都市部ではヒートアイランド現象が深刻化してきているように感じています。

地中熱利用は以前から冷房時の排熱を地中に送るため、ヒートアイランド現象の緩和効果が期待されると言われてきましたが、この効果をいま一度、重視していく必要があるように思います。

例えばですが、地中熱のうち帯水層蓄熱の事例では、夏期の冷房排熱だけでなく路面の熱も冬期用の帯水層に蓄熱し、冬期の暖房熱源として利用しているケースもあります。夏の熱を冬の暖房に生かす非常に効率の良い取り組みであり、冬期暖房の一次エネルギー消費量削減はもちろんですが、夏期のヒートアイランド現象の緩和効果も期待できるのではないかと思っています」

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◆地下水の熱利用に向けて揚水規制緩和の検討視野に◆

――確かに都市部では多くの建物自体が太陽熱で温められるほか、無数に設置されている空気熱源方式のエアコン室外機からの排熱による加温効果も大きそうですから地中熱利用による夏期のヒートアイランド現象緩和効果の検証の結果などもわかるといいですね。

「2026年度ですが、先ほど触れた帯水層蓄熱等にも関係してくるものとして、『揚水規制に係る検討』も行いたいと考えています。

帯水層蓄熱を含めて地下水を熱源とする熱交換方式は、非常に熱交換効率が高く、導入コストの削減やさらなる省エネ化などに大きな効果を発揮するものと考えますが、高度経済成長期の地盤沈下を踏まえ、現在でも多くの地域で厳しい揚水規制が設けられており、脱炭素化のためと言っても簡単に地下水を利用できないケースは少なくありません。

帯水層蓄熱システムの普及を目指す大阪市が、国家戦略特区において認められている規制緩和について、大阪市域における地盤環境に配慮した地下水の有効利用に関して要望を行い、ビル用水法等の揚水規制の緩和を進めていますが、ほかの地域では規制のため地下水の熱利用を進めにくい状況があります。

そこで、2026年度はビル用水法省令の見直しに向けた検討を進めるほか、ガイドラインの策定に向けた準備も進めていきたいと考えています。

このあたりも予算成立が前提になりますが、注目していただければと思っています」

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――2026年度も注目される施策が盛りだくさんですね。ありがとうございました。(終わり)


◆金沢駅前に開業した「Hirooka Terrace」:BELS最高評価も◆

北陸エリアにおける新たな交流・協創・革新を生み出す拠点としてこのほど開業した「Hirooka Terrace(ヒロオカ テラス)」(石川県金沢市広岡2-12-6)では、省エネの観点から地下水の熱利用も行っており、注目されます。

これは、「地域から世界をよりよいものにする。」「未来を構想し、挑戦・創造する『ビジョナリーリージョン』を実現する」べく、10月1日に社名変更を行ったCCIグループ(旧称:北國フィナンシャルホールディングス)が計画を推進、三菱地所設計による設計監理のもと竣工したもので、CCIグループの拠点である「北國銀行本店ビル」(2014年竣工、設計:三菱地所設計)に隣接しています。施工は清水建設です。

この施設は、両棟で連携を図りながら、金融機関をハブとして地元企業・官公庁・教育研究機関をつなぎあわせる場として機能し、地域づくりの取り組みに加え、首都圏や海外への展開・情報発信を強化する拠点となるとしています。

Hirooka Terraceでは、働く場所の開放性と流動性を高め、協創拠点として、多様な利用者が交差し、新たな革新を生み出すワークプレイスの構築を目指すとともに、これを内部にとどめず、外部の自然を感じられる環境として実現することが新たな可能性になると考えたとしています。

サステナビリティの視点では、石川県産木材を潤沢に利用した「MIデッキ」を導入したほか、延床面積20,000㎡を超える高層オフィスビルで初となるNearly ZEB認証を取得した点が特徴になっています。

特徴的な外観を生み出す半外部のテラスは、内部への日射の直達を遮蔽し、Low-Eガラスとの組み合わせにより、空調負荷を大幅に削減。また、テラスには利用者の手で開閉が可能なジャロジー窓を設置し、風通しの良い空間をつくりながら、事務室の自然換気を促すパッシブデザインを行っています。

さらに、こうした建築計画に加えて、地下水を用いた熱源システムをはじめとする高効率設備を導入することで、徹底した省エネ化を図り、建築物省エネ法に基づく第三者認証制度である「BELS」の最高評価(ファイブスター)ならびに「Nearly ZEB」を取得しています。

JR金沢駅金沢港口からすぐの場所に立地する施設での地下水の熱利用は、地域産業の交流・協創・革新を生み出す拠点としてもさることながらサステナビリティの視点でも大きな注目を集めそうです。

※この記事は地中熱等の電子専門紙「Geo Value」Vol.231に掲載したものです。

※記事中の写真、図は三菱地所設計発表資料より。

2031年度を目途にさいたま新都心に本庁舎を移転整備するさいたま市はこのほど、「さいたま市新庁舎整備基本設計説明書(素案)」を取りまとめました。防災拠点としての機能を有する庁舎として整備しますが、地中熱利用も行うなど環境性能の高い庁舎として整備する方針としており注目されます。

さいたま市新庁舎整備等基本計画(令和6年3月)で示した基本方針を基にまとめた「基本設計説明書」によると、9つの基本理念を掲げ、そのうち「SDGsに配慮した環境に優しい庁舎」では、次世代太陽電池の設置スペースの確保や放射冷暖房、パッシブデザインを採用するとともにエネルギー消費をBEMSによる最適化し、脱炭素型の庁舎として整備するとしています。

庁舎は高層構造となる行政棟や議会棟、市民が集える中広場棟から構成され、地中熱ヒートポンプはこのうち市民スペースとなる中広場棟に導入する考えとなっています。

中広場棟は、天候に左右されず一年中快適に過ごせる全天候型の屋内広場として整備されるもので、災害時には一時避難場所として利用することが想定されています。地中熱ヒートポンプは熱源の主体に利用するとし、このほかにも太陽光発電パネル、次世代型太陽電池の設置スペースを確保するとしています。

2026年度には事業者を選定し、2027年度から2030年度に実施設計・建設工事を進めるスケジュールとなっています。

※この記事は地中熱利用等の電子専門紙「Geo Value」Vol.230に掲載したものです。

概要はさいたま市ホームページの以下URLを参照してください。

◆温室効果ガスの削減とともに期待されている大気汚染物質の削減◆

ゼネラルヒートポンプ工業株式会社(名古屋市中村区名駅前2-45-14東進ビル7F 、柴芳郎代表取締役)がモンゴル国ウランバートル市で取り組んでいた地中熱・太陽熱ハイブリッドヒートポンプ暖房システムの実証設備が2025年2月に現地検査、同年3月に譲渡完了しました。新型コロナウイルスの流行やウクライナ情勢などから予定よりも大幅に遅れたものの、温室効果ガスの削減はもとより冬季暖房による大気汚染が深刻なウランバートル市において大気汚染物質を排出しない地中熱利用システムは今後、大きな関心を集めそうです。この取り組みや新たな市場としてのモンゴル国等について同社の柴芳郎代表を取材しました。(エコビジネスライター・名古屋悟)


◆地中熱・太陽熱ハイブリッドヒートポンプ暖房システム概要、効果◆


現地調査を終え、譲渡も完了した地中熱・太陽熱ハイブリッドヒートポンプ暖房システムは2020年度に公益財団法人地球環境センター(GEC)の「

地中熱・太陽熱ハイブリッドヒートポンプ暖房システムが導入されたのは、同市121番小中学校で、地中熱交換器120m×64本とハニカム型太陽熱集熱器2㎡×16枚、同社製の再エネ熱対応ヒートポンプチラー「ZQS」280kW(70kW4台)、熱源制御・遠隔監視システムZEOS/ZQ Cloudでシステムが構成されています。


121番小中学校に導入された再エネ熱対応ヒートポンプチラー「ZQS」

地中熱交換器部分はイメージ図

再エネ熱対応ヒートポンプチラー「ZQS」は2020年度新あいち想像研究開発補助金により開発し、2022年1月から販売開始したもので、従来機と比べCOPが約10~20%アップ。熱源制御・遠隔監視システムZEOS/ZQ Cloudにより、日本からも制御が可能になっています。

極寒冷地のため暖房需要が高く、太陽熱は地中の温度低下を補完する役割を担っています。

このシステムの導入により同国で普及している石炭ボイラーに比べて、CO2排出削減率は84%(年852t)及び大気汚染物質であるSO2排出量は89%の削減効果が見込まれており、冬期の深刻な大気汚染に悩んでいる同国において同システムが大きな効果を果たせる可能性が示されています。

◆平坦ではなかった道のり~事業の変更、不可抗力の事態発生で◆


しかし、「ここまでの道のりは平たんではなかったです」と同社柴代表は語ります。

同社の同国での地中熱導入への挑戦は、2016年度に遡ります。当時、同国において環境事業のコンサルティングを行っていた日本法人の相談を受け、2017年1月に独立行政法人国際協力機構(JICA)の「中小企業海外展開支援事業~案件化調査~」において「再生可能エネルギー地中熱ヒートポンプによる環境配慮型暖房システムの案件化調査」(モンゴル)が採択されたことで、同国での地中熱導入に向けた調査に乗り出したことに始まります。

案件化調査を行うことになった同国は、冬期の気温が非常に低い厳寒地で暖房を石炭に依存しています。近年では、同市に人口一極集中が起きており、石炭ボイラーから排出される煤塵による大気汚染が深刻化。慢性気管支炎や喘息、肺がん等の健康被害が大きな問題となっていることに加え、石炭燃焼によって発生するCO2の排出による地球温暖化への影響も懸念されていることから、これらの問題解決に向けて大気汚染物質削減による国民の健康被害の改善、かつCO2排出量の削減を両立できる地中熱ヒートポンプ技術の導入を進めるための調査を行うことになったとしています。

2018年1月には同市と基本合意書(MOU)を締結。

同社(代表事業者)と同市(共同事業者)の国際コンソーシアムを組み、79-1小中学校で調査を開始。熱応答試験(TRT)を実施するなどしたほか、教室の一室を機械室とし、熱交換井(ボアホール)100m×64本を設置することなど概略設計等を進めました。

しかし、案件化調査は進んだものの、JICAの普及・実証事業には2019年まで4回提案したものの採択されなかったことから、2020年公益財団法人地球環境センター(GEC)の「コ・イノベーションによる途上国向け低炭素技術創出・普及事業」への提案に切り替え、「極寒冷地モンゴル国ウランバートル市における地中熱・太陽熱ハイブリッドヒートポンプ暖房システム実証」を提案し、採択されました。

この事業は単独の技術ではなくほかの技術と組み合わせて相乗効果を求めることから地中熱ヒートポンプと太陽熱を組み合わせた地中熱・太陽熱ハイブリッドヒートポンプ暖房システムのリノベーション・実証を行うこととしていました。

それでも「ようやく実証に乗り出せると思っていましたが、予期せぬ課題が発生し、順調に進むことはできませんでした」と柴氏。

2020年度から2022年度の計画で進める予定でしたが、当初実証を行う予定だった79-1小中学校では熱電所拡張計画で熱供給を受けることになっていたことからヒートポンプシステムが不要になり、121番小中学校にサイト変更。2020年から2022年にかけての新型コロナウイルスのパンデミック、20222年からのロシア・ウクライナ戦争、同国内での汚職事件、同市内での洪水被害などの影響を受け、物資の到着遅れ、地元施工業者の力量不足など様々な課題が重なり、さらに2年間事業が遅れることになりました」と述べ、ここまでたどり着く苦労を滲ませました。


◆トラブルあったものの導入進める意義ある地域◆


しかし、ここまでトラブルなどもあって苦労したものの、大気汚染が深刻な同国では、大気汚染物質の排出抑制が急務であることや、調査を通じて同市の地質が熱伝導率の良い地質であることが分かったことなどから地中熱ヒートポンプシステムが普及する余地があるとし、同社では今後、同国内での事業化に向けて取り組む考えを示しています。

今後、建築物の設計から工事完了に至る過程の中で、環境品質やエネルギー効率を高め、必要な品質を確保するために、建築主の依頼を受けた第三者の立場から検証を行い、客観的な情報を提供するコミッショニングを行いたいと考えているほか、アジア開発銀行(ADB)の事業受託を目指して取り組んでいます。また、営業やメンテナンスを手掛ける現地法人の設立も視野に入れており、今後、具体的に進めていければと考えています」と述べており、注目されます。


◆成果も参考にモンゴル国地中熱ヒートポンプ標準も作成◆


なお、「極寒冷地モンゴル国ウランバートル市における地中熱・太陽熱ハイブリッドヒートポンプ暖房システム実証」の成果を参考に、世界銀行の「モンゴル国地中熱ヒートポンプ標準作成プロジェクト(エネ研担当)」にNPO法人地中熱利用促進協会の協力のもと、同社も助言を行うなどし、同国における地中熱ヒートポンプ標準が作成され、2023年12月29日に同国において施行されています。

同国における取り組みから中央アジアのほかの国からも相談を受けるケースが出てきているとし、今後さらに広がりを見せるかも注目です。


※記事中の図や写真はすべてゼネラルヒートポンプ工業株式会社提供

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◆NEDO事業で「帯水層蓄熱を中心とした面的熱利用によるZEB及びZEH-Mの運用に係わる技術開発」◆

2023年度までに「高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システム」により積雪寒冷地における『ZEB』(ネット・ゼロ・エネルギービル)を実現した日本地下水開発株式会社(山形市松原777、桂木聖彦社長:企業名略称JGD)は、システムのさらなる進化を目指し、高効率帯水層蓄熱システムをベースとした面的熱利用システムの開発に着手。JGDが確立した「高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システム」と、それを応用する形で開発される面的利用システムとはどのようなものか。帯水層蓄熱の開発からさらなる高効率化システムの開発、それをさらに高度利用する面的利用システムの確立を目指すJGDの取り組みを紹介します。(エコビジネスライター・名古屋悟)

◆帯水層を蓄熱槽として利用する帯水層蓄熱◆

JGDは、積雪寒冷地である山形県に所在しています。1970年代から地下水の熱利用を研究開発、実用化してきた同社は、その経験を生かし、冬期の降積雪により『ZEB』が難しいと言われている積雪寒冷地での『ZEB』実現を目標に、地下水が貯留されている帯水層を利用する技術開発に取り組んできました。

JGDが着目したのは、「帯水層蓄熱システム」です。地下に広がる帯水層に蓄熱して建物の冷房・暖房を効率的に行う技術で、夏期の冷房で出る温熱を蓄えた帯水層の地下水を冬期の暖房熱源に、冬期の暖房で出る冷熱を蓄えた帯水層の地下水を夏期の冷房熱源に利用することで、冷暖房の効率化を図れるものです。

◆積雪寒冷地での『ZEB』達成に寄与した「高効率帯水層蓄熱システム」◆

この「帯水層蓄熱システム」を高度に生かす「高効率帯水層蓄熱システム」の開発を目指し、2014年度~2018年度にかけて国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「再生可能エネルギー熱利用技術開発」により、技術を確立しました。

「高効率帯水層蓄熱システム」は、2本の井戸を冬期と夏期で交互に利用し、地下水の流れの遅い地下帯水層に冬期の冷熱、夏期の温熱をそれぞれ蓄える仕組みです。

冷房利用で温度が上昇した地下水をさらに太陽熱で加温し、より高温となった温熱を冬期の暖房用井戸周辺の地下帯水層に蓄え、冬期はその温かい地下水を暖房用に利用します。一方、暖房で利用して温度が低下した地下水をさらに融雪の熱源としても利用し、より低温となった冷熱を夏期の冷房用井戸周辺の帯水層に蓄え、夏期に冷房で利用します。

このシステムをJGD関連会社の事務所で空調に導入した結果、JGDの従来型帯水層蓄熱システム(3本の井戸を冷暖房の熱源として利用するシステム)に比べて初期導入コスト21%削減、年間運用コスト31%削減を実現しました。

さらに、この技術開発では、熱利用後に地下に戻すのが難しかった地下水を全量還元できる井戸構築技術も確立しています。

◆冷暖房・給湯・冬期の無散水融雪の3つの熱需要を満たすトータル熱供給システム◆

「高効率帯水層蓄熱システム」を確立したJGDは、「高効率帯水層蓄熱システム」のさらなる高度利用を目標に、2019年度から2023年度にかけてNEDO事業「再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発」において、「高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システム」の開発を進めました。

この研究開発では、「高効率帯水層蓄熱システム」を柱に、太陽光発電設備(30.7kW)、断熱効果を高めた外壁(厚さ300mm)、給湯回路に真空管式太陽熱温水器(84本)、換気装置に全熱交換システム、照明にLED照明、南西側の窓に太陽輻射熱を最大82%遮断する外付ブラインドを組み合わせ、関連会社である日本環境科学株式会社(山形市高木6:企業名略称JESC)ZEB棟で実証試験を行いました。

このシステムの大きな特徴は、「冷暖房」・「給湯」・「冬期の無散水融雪」の計3つの熱需要に対応する点です。

この3つの需要を満たすため、「再生可能エネルギー熱利用技術開発」で開発した冷暖房専用ヒートポンプに給湯回路を付加したヒートポンプ(冷房能力30kW、暖房能力30.1kW、給湯能力30.2kW)をゼネラルヒートポンプ工業株式会社と共同で開発しています。

実証が行われたJESC-ZEB棟は、鉄骨造の地上2階建、建築面積285㎡、延床面積562.5㎡の建物で、2021年2月から2023年10月までの期間でデータを収集。その結果、各年度の冬期運転と夏期運転のトータルエネルギー収支は、削減したエネルギー量が消費電力量を上回る結果となり、全期間を通じて『ZEB』を達成しました。

帯水層蓄熱のメリットをJGDの桂木聖彦社長に聞くと、「需要側に有利な温度の地下水揚水が可能な点です」と言います。例えば2021年度のデータによると、地下水初期温度は16℃ですが、冷房開始時は事前の冷熱蓄熱でより冷たい13.5℃、暖房開始時は事前の温熱蓄熱でより温かい22.8℃の地下水が得られています。熱はその後、蓄熱の消費(揚水量の累積)に伴って初期温度に向けて徐々に収束していきますが、冷熱が必要な期間、温熱が必要な期間を通じて条件の良い熱が得られ、エネルギー消費の削減に大きく寄与していることが分かります。

◆エネルギー消費をさらに削減する工夫…夏期のフリークーリング、冬期用に太陽熱蓄熱など◆

『ZEB』達成の大きなポイントについて聞くと、「夏期の冷房でヒートポンプを使わず地下水の冷熱だけで冷房するフリークーリングを行っていることに加え、給湯用に導入した真空管式太陽熱温水器で集めた熱を利用すること、通常は冬期に融雪で利用する無散水融雪システムを夏にも運転させて集めた温熱を冬期に暖房で使う井戸周辺の帯水層に貯めておくことです」としています。

例えば、フリークーリングの効果は大きく、フリークーリングとヒートポンプ冷房をそれぞれ実施した2023年度夏の結果を見ると、フリークーリングのシステムCOP(SCOP)が23.00だったのに対して、ヒートポンプ冷房のSCOPは8.74となっており、エネルギー消費量削減効果の高さがうかがえます。

◆ZEB改修の事務所とZEH-M化目指す社員寮で面的利用を実証へ◆

同社は、これらの研究成果をさらに進化させるべく、今注目されている熱の面的利用への応用に乗り出し、NEDOが2024年度から28年度にかけて実施する「再生可能エネルギー熱の面的利用システム構築に向けた技術開発」において、複数の熱需要に対して面的に熱供給する高効率帯水層蓄熱システムに関する研究開発「帯水層蓄熱を中心とした面的熱利用によるZEB及びZEH-Mの運用に係わる技術開発」(ゼネラルヒートポンプ工業と共同提案)をスタートしています。

高効率帯水層蓄熱システムを中心とした再エネ熱をZEBならびにZEH-Mといった複数施設で利用する面的熱利用システムの熱源とし、熱負荷の平準化、熱融通、熱利用を高度化することで、最終年度の2028年度に再エネ熱利用システムの導入コストを年度比で25%削減、ランニングコストを25%削減することを目標としています。

実証は、建て替え予定でZEH-Mを目指す社員寮(木造2階建て約600㎡:1K15部屋)とZEB改修予定の山形事務所(鉄骨平屋建て約200㎡)の2棟で行う計画です。

共通の帯水層蓄熱システムを2棟で利用する形で行う予定で、「高効率帯水層蓄熱システム」をベースに、太陽光発電設備、断熱効果を高めた外壁、給湯回路に真空管式太陽熱温水器などを導入する予定としています。

社員寮は社員が仕事から戻る夜から朝、山形事務所は社員が出社している日中に電気や熱の需要が集中するため、熱需要の分散が期待できますが、これまでの実証と異なるのは社員寮に風呂等が設置される点です。暖房用帯水層に夏期に温熱を蓄えるものの特に冬期に温熱需要が高くなることが予想されることから「給湯負荷がどの程度になるかが今後の設計のポイントになります」と述べ、太陽熱による補助等をポイントに挙げています。

社員寮は15部屋ありますが、このうち5部屋は高効率帯水層蓄熱システムによるヒートポンプ給湯、5部屋は空気熱源を利用するエコキュート、5部屋はガス給湯とし、比較試験を行う予定としており、この比較結果も注目されます。

研究開発項目は「集合住宅ZEH-M建築」、「既存事務所ZEB化」、「面的利用システム構築とモニタリング」、「フリークーリングによる高効率化」、「太陽熱集熱器による高効率化」、「給湯専用小型ヒートポンプの開発」、「スケール付着判別の自動化手法の開発」の7項目が研究開発項目として設定されています。

2024年内に社員寮の基本設計を終えたほか、高効率帯水層蓄熱用の熱源井戸の掘削工事もこれまでに完了させ熱源井戸の揚水・注入試験を終え、連続揚水後の地下水位回復等も確認しています。

今後社員寮の新築工事と山形事務所のZEB化工事が本格化し、社員寮は2026年度半ば竣工、事務所のZEB化も2025年度内にも終える予定になっています。

◆「ZEBプランナー」でもあるJGD◆

「ZEBプランナー」にも登録されているJGDでは、「高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システム」の今後の普及拡大に向け、「東北地方を中心とした積雪寒冷地域を重点エリアとし、ZEB仕様建物の設計事務所や再生可能エネルギー熱の導入に積極的な設計者、環境意識が高い施主や設計者、CO2排出量削減意識が高い施主や設計者などを対象に広めていきたいと思っています」とし、対象施設については「建物面積500㎡~1,500㎡規模の建物で、特に24時間空調が必要な老健施設や診療所、庁舎や消防署等の防災拠点などが主な対象になると見込んでいます」述べており、今後の展開が注目されます。

なお、JGDではこれまでに公共・民間含め11施設に帯水層蓄熱システム(うち2施設が高効率帯水層蓄熱システム)を納入し、帯水層蓄熱システムによるエネルギー消費削減に貢献しています。

◆高い評価を受ける高効率帯水層蓄熱システム◆

JGDの高効率帯水層蓄熱システムの開発等は高く評価されており、2020度に経済産業省東北経済産業局の「再生可能エネルギー利活用大賞最優秀賞」、「気候変動アクション環境大臣表彰」を受賞したのに続き、2021年度には「新エネ大賞経済産業大臣賞[導入活動部門]」、山形県産業賞を、2024年度には「山新3P賞繁栄賞(山形新聞,山形放送)」などを受賞しています。

2024年度からNEDO事業で研究開発を進めている「 帯水層蓄熱を中心とした面的熱利用によるZEB及びZEH-Mの運用に係る技術開発」については、2025年7月17日に開かれた「NEDO再生可能エネルギー分野成果報告会2025」において経過等が発表されています。


※記事中の図は、日本地下水開発株式会社提供

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西日本最大級の物流拠点に国内最大級の地中熱利用システム――。アマゾンジャパン合同会社と三菱地所株式会社は8月、名古屋市港区内にAmazonの物流拠点(フルフィルメントセンター:FC)を新設します。この拠点は、三菱地所の施設「ロジクロス名古屋みなと」(名古屋市港区品川町2-1-6)をAmazon専用に設計し、延床面積は約12万5,000㎡、商品保管容量は約137万立方フィートで、西日本最大のFCとしています。

このFCでは、Amazonと三菱地所が協働し、地中熱空調システムや壁面設置の太陽光発電設備などを導入。これにより、施設の運営に係る温室効果ガスの排出およびエンボディドカーボン(建築物の資材調達から輸送・建築・修繕・廃棄等、建築物の運用以外で発生する二酸化炭素)削減を見込むとし、日本の建物として初めて、国際的な認証であるInternational Living Future Institute(Living Future)のゼロカーボン認証取得が見込まれています。

国内最大級とする地中熱利用システムは、200本の地中熱交換器を実装。1階部分の冷房および暖房に利用することで、低エネルギーで室温を快適に保つとしています。これにより従来の空調と比べて約30%のエネルギー消費量削減が見込まれているとし、Amazon全体の物流拠点においても先進的な取り組みとしています。(以上、「Geo Value」Vol.233より)

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