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◆単価高い果物のハウス栽培視野に青森県深浦町で温泉廃水の熱利用の実証実験◆

◆2年間の試験で冬期に必要な温度の確保を確認◆

寒冷地で温泉廃水の未利用熱を活かして世界三大美果「チェリモヤ」の栽培を――。株式会社日さく(さいたま市大宮区桜木町4-199-3、若林直樹社長)は、国立大学法人弘前大学地域戦略研究所新エネルギー研究部門の若狭幸助教ら研究チーム、ジオシステム株式会社(東京都練馬区関町北3-39-17、高杉真司社長)と共同で実証実験「高効率の熱交換器を利用した温泉廃熱の農業利用の試み」を青森県深浦町で実施し、温暖な環境が必要な「チェリモヤ」の栽培に向けて冬でも必要な温度を確保できたことを確認したとしており、同地域における「チェリモヤ」栽培に弾みがつくか注目されます。

「チェリモヤ」は南米原産の果物で、「森のアイスクリーム」と呼ばれる高級果物で、栽培適合温度は15~30℃。日本国内での栽培では、冬季の暖房がカギとなり、この試験では「チェリモヤ」を栽培するのに必要な冬季の室内温度5℃以上を目指して試験が行われています。


◆冬期(11月~2月)の加温のみでヒートポンプも不要◆


2022年度から2023年度にかけて実施した実証実験では、青森県深浦町の既設源泉を利用し、源泉から自噴している未利用の温泉廃水を温泉貯留槽に貯め、そこから採熱し、付加価値の高い農作物「チェリモヤ」の冬期栽培に向けて必要な温度を確保できるかを確認。

熱の需要は冬期の加温のみであり、そもそも水温の高い温泉水を利用するため、ヒートポンプを使わないシステムになっている点が特徴。

加温する実証実験施設は、面積5.6m2の半球状のドーム型温室。

熱交換器には、ポリエチレン製の熱交換シート(商品名:G-HEX)を筒状に丸めたものを採熱・放熱で使用。

採熱部分は常時温泉水の流れがあり、採熱効果がより得られるようになっています。

一方、放熱部分は植物の葉の部分を温めるように熱交換シートを屏風状に立てるように設置しています。

この加温システムの実証は、冬期(11月から2月)のみ実施。

温泉温度50.6℃(温泉流量200L/min)で、2022年11月からデータを採取し始め、採熱側の循環流量12L/minで採熱側の入口と出口の温度差は約2.9℃程度となり、放熱側(室内側)の温度は目標である室内温度5℃以上をおおむね確保することができたとしています。


◆熱交換シート付着の温泉スケールの除去、能力回復も確認◆


採熱側で運転後期に採熱温度差の低下が見られたものの、これは採熱器への温泉スケールの付着が原因と考えられ、定期的に高圧洗浄をかけるなどすることで採熱能力が回復することも確認しています。


◆温泉熱で得られた熱をボイラー換算するとA重油年間5万7,600円分◆


日さく株式会社の高橋直人氏によると、「今回の実証実験では、施設での放熱器からの熱放出量は約2.0 kWと試算。化石燃料の燃焼に換算した場合、5,760 kWh/年となり、これをA重油の量に換算すると576 Lとなります。コスト面で見ると、A重油の単価を100円/Lとするとボイラーを用いて暖房した場合のコストは年間5万7,600円となります」とし、この温泉熱を利用すれば通常のボイラーでかかる燃料代等よりもランニングコストの面で有利になる可能性を示唆しています。


◆CO2排出量年間1,540㎏分の抑制にも◆


また、温室効果ガスの排出についても「(A重油)であった場合、CO2排出量は年間1,540kgとなります」とし、温泉熱によるシステムを利用することで温室効果ガスの排出抑制にもつながる可能性を示唆しています。

今回の実証実験は、「チェリモヤ」栽培に必要な室温がキープできるかを確認するものであり、「チェリモヤ」自体の結実等までは至っていませんが、「チェリモヤ」の販売価格は1個あたり安価でも5,000円を超えるものであり、今回の試験が高付加価値作物の生産の第一歩となることに期待が集まっています。


※記事中の図や写真は、(株)日さくより提供いただいたものです。

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◆書籍「再生可能エネルギー熱」(幻冬舎:著者・柴芳郎)販売開始◆

2050年脱炭素化に向けて再生可能エネルギーによる発電(太陽光発電)や更なる省エネ化が進められていますが、最近大きな関心を集めているのが、再生可能エネルギー利用の1つである「再生可能エネルギー熱」(再エネ熱)利用です。

再エネ熱には、このサイト「広報『地中熱』」で紹介している地中熱や地下水熱などのほかにも、太陽熱、バイオマス熱、温泉熱、雪氷熱など自然界に存在する熱エネルギーがあります。この熱エネルギーを直接利用することで発電よりも高効率なエネルギー変換が可能であり、より大きな省エネ、温室効果ガスの排出抑制(省CO2)効果が得られることから注目を集めています。

具体的な用途は、建物の冷暖房や給湯などの熱源として利用できるほか、農業分野での施設園芸における温度管理などで利用できます。

例えば、地中熱や地下水熱は冷暖房、給湯、消融雪に、太陽熱や温泉熱、バイオマス熱は給湯や加温、床暖房、消融雪などに利用でき、いずれも従来のシステムよりも化石資源由来のエネルギー消費量がないまたはとても少なく、温室効果ガス(CO2)排出量を大幅に抑制することができます。

このことからSDGs(持続可能な開発目標)の達成においても再生可能エネルギー熱利用は大きな注目を集めています。

こうした中、書籍「再生可能エネルギー熱」(著者・柴芳郎)が幻冬舎より6月28日に販売が始まりました。


◆四半世紀にわたり地中熱等の利用方法を研究している柴氏◆


再生可能エネルギー熱の専門家である著者の柴芳郎氏は、四半世紀にわたり地中熱、温泉熱、太陽熱などの利用方法を研究。

柴氏が代表取締役をつとめるゼネラルヒートポンプ工業株式会社は、再生可能エネルギー熱をより効率的に生かすヒートポンプを製造し、これまでに地中熱や地下水熱を利用した空調設備を数多く手掛けているほか、病院における人工透析治療で使用された透析排液やRO濃縮水を熱源とした水冷式ヒートポンプとインバータ技術を駆使してRO原水を加温することで、従来設備(電気ヒーター等)の稼働率を削減し、大きな節電効果・CO₂削減を実現するシステムなどを提供しています。


◆ネット・ゼロ・エネルギーに繋がる再エネ熱◆


本書は、発電よりも効率的な熱利用は社会に大きなメリットを生み、省エネルギーと省コストに大きく貢献できると示しており、再生可能エネルギー熱の重要性と有効性を知ることで、ネットゼロエネルギー・ネットゼロカーボンにつながる一冊になっています。

新刊「再生可能エネルギー熱」は、全国の書店( 三省堂/ 丸善/ ジュンク堂/ 紀伊国屋等)で購入できるほか、Amazonでも購入可能です。

【価格】¥990-(税込)

Amazonでの購入は以下URLから👇

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◆ターゲット事業者への提案力を高め、地中熱を活用したヒートポンプシステムの農産物工場を施工・販売し、主力事業に◆


◆経営改革新計画を埼玉県が中小企業等経営強化法に基づき承認◆


地中熱を活用して省エネ、省CO2で国産きくらげ栽培を――。地中熱など再生可能エネルギー熱の農林水産業での活用に関心が高まる中、地中熱工事等を手掛けている株式会社PEC(埼玉県桶川市加納873-2、遠藤康之社長)は、新規事業として「地中熱を活用したきくらげ事業」を開始することを決め、このほどその新規事業の経営革新計画が中小企業等経営強化法に基づき埼玉県に承認されました。

この取り組みは、市場で注目を集める地中熱を活用したヒートポンプ事業の用途開発を行い、提案営業を行うことで導入件数を増やし、新たな事業の柱に育てていくことを念頭においたもの。

燃料高騰に苦しみSDGsの意識が高まっている市場を選択し、クリーンな省エネ効果を訴求して運用面まで踏み込んで提案を行っていくほか、若い世代が注目しているSDGs貢献の活動を推進し、自社の知名度を上げて顧客だけでなく入職予定者の層にも自社の魅力を訴求していくことも視野に入れています。

同社では、国内に流通している8割以上が輸入品である「きくらげ」が近年、国内産のニーズが増えていることから「きくらげ」栽培に着目。「きくらげ」を国内で通年栽培するには安定した温度制御が必要になりますが、空調負荷の高い夏期と冬期には冷暖房費がかさんでいる点を考慮し、地中熱を活用したヒートポンプによる「きくらげ」栽培を事業化する考えとしています。


◆自社の新規事業による就業希望者の囲い込みも狙いに◆


同社では以前、「きくらげ」工場を施工した経験があり、その経験をもとに地中熱を活用したヒートポンプを導入した工場を本社敷地内に建設。モデル工場としてターゲット先への提案の場とするとともに近隣住民等に広く宣伝し、見学の場として公開することで自社の知名度を向上させたいとしています。

体制についても、農産物の栽培や収穫、梱包作業等には高齢の従業員を配置転換し、工事現場での安全リスクの低減を図るほか、収量の拡大とともに近隣の主婦層をパートとして採用し、働きやすい職場にしていくことでシニア層や主婦層にも優しい事業者として認知され、若手層からの就業希望者の囲い込みを図っていく狙いもあります。

新工場1期目は延べ面積20㎡、自社で地中熱を活用したヒートポンプ工事を行い、高断熱材を使用したハウス構造できくらげ生産の効率アップと省エネで優しい仕様とする考えとしています。

自社で工場を建設・運営することでノウハウを蓄積し、ターゲット事業者への提案力を高め、

地中熱を活用したヒートポンプシステムの農産物工場を施工・販売し、主力事業に育てていきたいとしており、注目されます。


◆浅層ボアホール施工の低コスト化等視野に無水掘削の有効性を検証◆


この新規事業のために同社では2024年5月、地中熱工事でコスト課題となっている熱交換井(ボアホール)工事の低コスト化等を視野に、通常より浅い層のボアホール施工に無水掘削の有効性の検証を開始。自社敷地内で無水掘削によるボアホール設置工事を実施しました。

通常のボアホール工事では深度100mほどの掘削が必要となり、泥水を用いた掘削工法が一般的ですが、小規模地中熱利用勉強会では20m程度の浅層の地中熱利用を視野に入れており、同社では土壌・地下水汚染調査等において10m程度の井戸掘削で使われている無水掘削が可能な掘削機に着目。泥水処理が必要なくなり、その分のコストカットが期待できるほか、泥水処理設備の設置スペースが不要になるなど省スペース化も期待されます。

当日は、小規模地中熱利用勉強会のメンバーも参加する中、土壌・地下水汚染調査等で使われる「ジオプローブ7822DT」を用いて試掘を開始。掘削ツールは4.25inchオーガーロッドとなっており、このロッドでは深度20mの施工実績がないため目標深度まで到達できるかどうか、施工可能な場合、どの程度の時間がかかるのか等を検証するとしています。

午前9:30~正午前までで8m程度掘削ができ、一定の手ごたえを感じたとしています。

今回試験的に掘削しているボアホールは、同社が新たに取り組む「地中熱を活用したきくらげ栽培事業」における熱交換用のボアホールとして使用するもので、4本を掘削する予定。検討している設備は、Uチューブ:呼び径25長さ20m×4本、ヒートポンプ:コロナ製HYS-AG11WZ〈定格暖房能力11kW〉としています。

なお、地中熱は「きくらげ栽培」の冬期暖房で利用する予定で、暖房の方式はファンコイルによる空調ではなく、床暖房方式にするとしています。

◆小規模地中熱利用勉強会◆

ボアホールの施工が可能であることが分かったのちは、設置したボアホールで十分な採熱が可能かどうか熱応答試験も実施する予定としており、今後の経過が注目されます。

なお、小規模地中熱利用勉強会は、小規模施設での地中熱利用の普及に向けたシステムの開発、普及目指す有志の会で、同社と日さくが幹事社として2023年度から活動しています。

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◆再エネ熱利用促進協議会代表・笹田政克氏インタビュー◆

再生可能エネルギー熱利用は太陽熱、地中熱、バイオマス熱など様々な種類があり、これまで各熱エネルギーの利用拡大に向けてそれぞれの活動団体が普及促進活動を進めてきました。各団体の精力的な活動でエネルギー基本計画に再エネ熱が明記されるなどしてきましたが、依然として太陽光発電など再生可能エネルギー発電に比べると一般への認知度は低く、認知度の向上等が課題になっています。こうした中、2024年4月1日、再エネ熱利用促進協議会が発足。各種熱エネルギーの枠を超えた連携によって再エネ熱の利用拡大に向けた取り組みが今後本格化していきます。今後どのような取り組みを進めるのか、同協議会の代表である笹田政克氏(NPO法人地中熱利用促進協会理事長)に話を聞きました。(エコビジネスライター・名古屋悟)

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◆4月1日に再エネ熱利用促進協議会発足◆

――再エネ熱利用促進協議会が2024年4月1日に任意団体として発足しました。

「2019年から活動している再エネ熱利用促進連絡会を母体とした組織で再エネ熱利用の普及拡大等に向け、再エネ熱ネットワークの運営や自治体向けのセミナー等を実施していく予定です」

――再エネ全体の認知度は高くなっていますが、再エネ熱はまだ知らない方も多く、協議会の活動では認知度向上等もポイントになると思いますが、いかがでしょうか。

「再生可能エネルギーは非化石エネルギー源で太陽光発電や風力発電など電力として利用されているものがよく知られていますが、太陽熱や地中熱、バイオマス熱、下水熱、海水熱、河川熱、温泉熱、雪氷熱など熱として利用できるものもあり、それらを再生可能エネルギー熱(再エネ熱)と言います。

主な用途として空調や給湯の熱源として利用が可能です。再エネ熱を使うことで化石燃料の使用量、温室効果ガスの排出量を大幅に削減することが可能です。

2010年には国のエネルギー基本計画に再エネ熱が加えられ、導入に向けた支援制度等も設けられるようになりましたが、太陽光発電など再エネ発電に比べて再エネ熱は認知度が低く、大きな課題と考えています」

――認知度の向上等が課題となる中で協議会が発足したわけですが、経緯を教えてください。

「再エネ熱の普及拡大に向けては太陽熱、地中熱、バイオマス熱などそれぞれの熱源に関わる団体が各々で普及拡大に向けた啓発活動等を進めてきましたが、再エネ熱全体の認知度向上、利用拡大を図るためには連携した取り組みが必要であり、2019年に一般社団法人ソーラーシステム振興協会、NPO法人地中熱利用促進協会、一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会が連携し、再エネ熱利用促進連絡会を立ち上げました。

連絡会では、迫りくる地球温暖化に向けた対策の一環として、主因であるCO2排出の削減のため、再エネ熱利用の重要性を内外に訴求し、再エネ熱の利用促進を目的として、連携した活動を行ってきました。再エネ熱の種類にとらわれない横断的な連携を行うことが大きなポイントで、再エネ熱利用の拡大に向けて政策提言等を行ってきたほか、再エネ熱に関わる人材育成に関する講座等を3団体が協力して実施してきました。

政策提言等に関しては、例えば2021年度には見直しが進められていたエネルギー基本計画、地球温暖化対策計画、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略に対してパブリックコメントを提出するなどしました。その結果、2050年に向けて再エネ熱が必要なエネルギーであることが明記されたところです。

人材育成の講座は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2022年度から2023年度にかけて実施した再エネ熱人材育成講座を地中熱利用促進協会が受託して実施したものです。基礎編や応用編など複数回実施し、延べ約400名が参加しています。

こうした連絡会の活動が協議会の発足に繋がりました。

連絡会を通じて連携して実施してきたNEDOの再エネ熱人材育成講座事業は、再エネ熱全体に精通する人材育成のほか、事業者のネットワークを構築すること等も目的となっていました。事業は2年間で終了しましたが、講座参加者等からも活動継続を望む声が多く寄せられていたこと等を踏まえ、2023年12月より講座参加者を中心に再エネ熱ネットワークを形成しました。

再エネ熱ネットワークには現在160名ほどが登録していますが、再エネ熱の利用促進に資するこの再エネ熱ネットワークを継承発展させるため、再エネ熱利用促進協議会の設立を目指しました」


◆再エネ熱ネットワーク会員への情報提供、自治体等対象としたセミナー等開催へ◆


――運営の体制や具体的な取り組みはどのようなものになりますか?

「去る3月26日に連絡会を構成する3団体を設立時の会員として設立総会をソーラーシステム振興協会事務所で開催し、代表に私、笹田政克(地中熱利用促進協会理事長)が選任されたほか、副代表に原人志氏(ソーラーシステム振興協会専務理事)、監査役に矢部三雄氏(日本木質バイオマスエネルギー協会副会長)が選任されたところです。

当面設立時の3団体を会員とし、運営していく方針です。協議会では再エネ熱に関心を持って登録した再エネ熱ネットワーク会員に情報提供していきたいと思っています。

設立初年度は、再エネ熱ネットワークの運営を行うほか、自治体を対象としたセミナーの実施、再エネ熱利用促進協議会のウェブサイトの開設等を予定しています。

再エネ熱ネットワークの運営では、再エネ熱講座(太陽熱・地中熱・木質バイオマス熱等)や再エネ熱シンポジウムのオンラインでの実施を予定しています。

自治体を対象にした再エネ熱セミナーは、自治体からの依頼を受け、対面でのセミナーを実施したいと思っています。

事業の具体的な実施スケジュールは、6月に開催予定の協議会通常総会で確定する予定ですが、基本的にはこれまでのNEDO人材育成講座と同様のスケジュールで、再エネ熱講座を10月に、再エネ熱シンポジウムを12月に実施する予定です。また、自治体を対象にしたセミナーについては、再エネ熱ネットワークとは別にこれまで連絡会が行っていた活動を継承し、再エネ熱に関心のある自治体と連絡をとりつつある状況です」

――再エネ熱利用に興味・関心がある企業、個人はどのようにすれば協議会の活動に参加できますか?

「協議会が運営する再エネ熱ネットワークは再エネ熱に関心をお持ちの方であれば、どなたでも無料で登録できます。ご希望の方は、再エネ熱ネットワーク登録フォーム(https://ws.formzu.net/fgen/S95824919/)から登録いただければと思います。講座・シンポジウムは多くの方にご参加いただけるよう、これまで同様参加費無料で実施の予定です。ネットワークに登録いただいた会員には講座やセミナー等をお知らせいたしますので、ぜひ登録していただければと思います。

なお、再エネ熱ネットワーク事業にかかる運営経費については、事業にご賛同いただける会社に協賛をお願いする予定です。よろしくお願いします」


※再エネ熱利用促進協議会ホームページは以下のURLから。

https://saienenetsu.com/

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◆埼玉県が「地中熱を活用したきくらげ栽培」の経営革新計画を承認◆

地中熱など再生可能エネルギー熱の農林水産業での活用に関心が高まる中、地中熱工事等を手掛けている株式会社PEC(埼玉県桶川市加納873-2、遠藤康之社長)は、新規事業として「地中熱を活用したきくらげ事業」を開始することを決め、このほどその新規事業の経営革新計画が中小企業等経営強化法に基づき埼玉県に承認されました。

この取り組みは、市場で注目を集める地中熱を活用したヒートポンプ事業の用途開発を行い、提案営業を行うことで導入件数を増やし、新たな事業の柱に育てていく必要性があることから進めるもの。燃料高騰に苦しみSDGsの意識が高まっている市場を選択し、クリーンな省エネ効果を訴求して運用面まで踏み込んで提案を行っていくほか、若い世代が注目しているSDGs貢献の活動を推進し、自社の知名度を上げて顧客だけでなく入職予定者の層にも自社の魅力を訴求していくことも視野に入れています。


◆モデル工場を本社敷地内に建設…対象事業者への提案の場等に活用◆


同社では、国内に流通している8割以上が輸入品である「きくらげ」について近年、国内産のニーズが増えていることから「きくらげ」栽培に着目。「きくらげ」を国内で通年栽培するには安定した温度制御が必要になりますが、空調負荷の高い夏期と冬期には冷暖房費がかさんでいる点を考慮し、地中熱を活用したヒートポンプによる「きくらげ」栽培を事業化する考えとしています。

以前、「きくらげ」工場を施工した経験があり、その経験をもとに地中熱を活用したヒートポンプを導入した工場を本社敷地内に建設。モデル工場としてターゲット先への提案の場とするとともに近隣住民等に広く宣伝し、見学の場として公開することで自社の知名度を向上させたいとしています。

体制についても、農産物の栽培や収穫、梱包作業等には高齢の従業員を配置転換し、工事現場での安全リスクの低減を図るほか、収量の拡大とともに近隣の主婦層をパートとして採用し、働きやすい職場にしていくことでシニア層や主婦層にも優しい事業者として認知され、若手層からの就業希望者の囲い込みを図っていく狙いもあります。

新工場1期目は延べ面積20㎡、自社で地中熱を活用したヒートポンプ工事を行い、高断熱壁材を使用したハウス構造できくらげ生産の効率アップと省エネで優しい仕様とする考えとしています。


◆地中熱活用した農産物工場の施工・販売を主力事業に◆


自社で工場を建設・運営することでノウハウを蓄積し、ターゲット事業者への提案力を高め

地中熱を活用したヒートポンプシステムの農産物工場を施工・販売し、主力事業に育てていきたいとしており、注目されます。


栄養分豊富に含む下水処理水、下水熱、CO2含有ガスを農業ハウスに供給

昨今、地中熱など再生可能エネルギー熱等を農業で活用させようという取り組みに関心が高まっています。一方で、冷暖房するだけの建物での利用とは異なり、作物の栽培には栄養や水が必要であるほか、作る作物等によって異なる温度条件など総合的な視点が重要となります。こうした中、横浜市では資源・エネルギーポテンシャルを持つ下水道の資源を複合的に農業で利用する「下水道資源を活用したスマート農業実証事業」が進められており、注目されています。この取り組みを進めている横浜市環境創造局を取材しました。(エコビジネスライター・名古屋悟)

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◆北部汚泥資源化センター内に農業ハウスを設置して検証◆

この実証事業は、循環型社会構築への貢献と農業のスマート化に向け、北部汚泥資源化センター(横浜市鶴見区)内で行われているもの。同じ環境創造局にある下水道関係課と農業関係課が手を結び、センター内に設置された農業用ハウスにおいて、スマート農業機器により温湿度等を制御した環境下、下水再生水や下水熱等の下水道資源を活用した栽培実証が行われています。下水道が持つ資源エネルギーの更なる活用と持続可能な都市型農業の推進という相互が目指す未来像に合致した取り組みになっています。

◆下水道の未利用資源エネルギーの活用とスマート農業の実現◆

両分野の状況を少し解説すると、下水道は地域の生活雑排水を処理し、きれいにした下水処理水を公共用水域に放流するという公衆衛生上、とても重要な役割を果たしている施設ですが、下水の処理水には窒素やリンなど植物の生育に必要な栄養素が豊富に含まれているほか、下水は外気温に比べて夏は冷たく冬は暖かいという特徴があり熱源としても利用可能です。また、下水処理の工程である生物処理を行う反応タンクでは植物の生育に欠かせない二酸化炭素(CO2)を含むガスも発生しています。

横浜市ではこれまでにも下水処理で発生する下水汚泥をバイオガスや石炭の代替燃料として100%再利用するなど下水道が持つ資源エネルギーの有効活用を進めてきましたが、下水再生水や下水熱など今後さらに活用が期待される資源エネルギーもあります。

図1:環境制御システムを備えた農業用ハウスの特徴(「下水道資源を活用したスマート農業実証事業」紹介パンフレットより)

◆持続可能な都市型農業の推進へスマート農業の取り組みに注力◆

一方、横浜市の農業は、神奈川県内で農地面積が最も広く、農家戸数も最も多いという状況にありますが、担い手不足や高齢化など持続可能な都市型農業の推進が課題となっています。このため、省力化や生産性の向上、そのための技術普及が一層求められており、高度な環境制御による農業の効率化などスマート農業の取り組みが進められています。また、農業を取り巻く環境では昨今、肥料に欠かせないリン鉱石の輸入価格が高騰していること等の課題もあります。

◆下水道供給資源含めて環境制御システムでハウス内を自動制御し最適化◆

「下水道資源を活用したスマート農業実証事業」はこうした両分野の思惑が合致した形で始まったもので、下水再生水、下水熱及び下水処理に伴い発生するCO2など下水道由来の未利用資源を有効活用して、農作物等の栽培を行い、東京農業大学など学術機関と連携しながら有用性や安全性等を検証しているほか、農家等に向けた研修や市民・企業等を対象とした見学会等を実施するなどし、スマート農業のプロモーションの場としても活用されています。

実証は、底面かん水による実証、スマート農業普及に向けた研修を行うPRハウスと、下水道資源活用に関する研究として水耕栽培を行う研究ハウスに分けて実施されていいますが、どちらのハウスにも下水処理水、下水処理場の反応槽で発生したガスを脱臭したCO2含有ガスが供給され、下水処理水の熱を利用するため熱交換器を通じた温風、冷風が供給されています。

環境制御システムがハウス内外の環境を遠隔でモニタリングし、天窓や循環扇などのほか、下水処理水、下水由来のCO2ガス、下水熱利用の冷暖房装置など各機器が自動制御されています。これにより植物にとって理想的なタイミングで機器を運転することができ、農業ハウス内環境を最適化し、ハウスでの作業回数の削減、省力化が期待されています。 

下水処理水の供給も興味深く、下水処理水をろ過・滅菌した下水再生水(トイレ用水等に利用している建物もあり)、通常の下水処理水、栄養分を添加した上水の3系統で比較が行われており、生育の違い等も検証しています。下水処理水とその他の差がなければ低コストで栄養分を含んだ水を供給できることが可能となることからその行方も注目されます。

 図2:下水道資源を活かすスマート農業ハウス(「下水道資源を活用したスマート農業実証事業」紹介パンフレットより)

 写真:下水処理水、再生水、上水の3系統で比較栽培(写真提供:横浜市)

なお、研究ハウスでは小松菜やトウガラシ、リーフレタス、アイスプラントなど葉物野菜、PRハウスではシクラメンなどの花卉類が栽培されています。

 

◆基礎研究3年、事業化実証3年かけ◆

2023年から始まった「下水道資源を活用したスマート農業実証事業」は現在、基礎研究の段階。3年間の基礎研究を終えた後、事業化に向けた実証を3年間実施する予定となっています。

事業をマネジメントしている環境創造局政策課では、「実際に下水道資源を活用したスマート農業を検討する農家の疑問や不安にしっかり応えられるように基礎研究を行い、どのような形が事業化に最適なのか等も検証していきたいと思っています」と語っており、今後の事業の行方が注目されます。

※「横浜市下水道資源を活用したスマート農業実証事業」の概要は同市ホームページの以下URLから。

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/kasen-gesuido/gesuido/torikumi/gesuidoshigenkatsuyo.html 

【記者目線】

未利用の下水道資源・エネルギーとスマート農業の融合はSDGsの実現が叫ばれる中、とても興味深い取り組みです。作物の栽培に必要な水、栄養分、CO2、熱の供給が可能な下水道の大きな可能性を垣間見た気がします。横浜市内の持続可能な都市型農業の実現はもちろんですが、下水処理場近傍で敷地が確保できる環境なら資源・エネルギーを供給する距離も短くなり、大規模な植物工場とのコラボレーションも可能ではないでしょうか。いずれにしても作物に最適な環境を定量的に検証している横浜市の実証は今後も注目すべき取り組みと言えます。

ECO SEED代表の名古屋悟がこのほど、朝日新聞デジタル「SDGsACTION」に寄稿しました。

テーマは「省エネ」で、省エネ効果の高い地中熱利用など再生可能エネルギー熱利用も盛り込ませていただいています。

この記事を見た方が「地中熱利用」や「地下水熱利用」に関心を持ってくれることを願っています。

寄稿した記事は以下リンク先より読むことができます!

◆代表取締役社長・萩原利男氏を訪ねる◆

「地中熱利用は、持続可能な開発目標(SDGs)達成を支えるツールの1つであり、私たちはその地中熱利用で地域に貢献していきたいと考えています」――。こう語るのは、甲斐の国・山梨県で地中熱利用の普及促進に取り組んでいる(株)ハギ・ボー(甲府市上今井町740-4)の萩原利男社長です。事業の多角化に伴い、新たな企業イメージの構築を図るため、2020年1月20日に萩原ボーリングから『ハギ・ボー』に社名変更した同社は、従来から掲げる   「地球環境との共存」という経営方針の基、再生可能エネルギーの1つである地中熱利用に 取り組んでいます。萩原社長を訪ね、同社の取り組みを取材しました。(エコビジネスライター・名古屋悟)

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◆行政機関や民間建物、ハウス栽培、介護施設等多様な場所に地中熱設備を導入◆


同社は、約25年前にエネルギー情報収集に心がけ、具体的に地中熱利用に取り組み始めたのは約12年前地中熱利用システムを普及させるため、本社屋に地中熱利用ヒートポンプ システムを導入し、省エネ性などを示すために継続的にモニタリングを実施しつつ、これまでの取組みの中で、行政の庁舎や民間建物に於ける空調、農業分野に於けるハウスの加温/冷却、温泉施設や介護施設における給湯/加温等多様な用途で実績を残しています。 採熱方式もクローズドループ方式、オープンループ方式、直接膨張方式等多様な方式も  手掛け、エンドユーザの地中熱利用による脱炭素化とランニングコストの低減をサポートしています。

「再生可能エネルギー熱利用である地中熱利用」は、当社が培ってきた温泉・地下水開発や地盤・土質調査といった技術を活かし、省エネや温室効果ガスの排出を抑制できる地産地消のエネルギーであることから手掛け始めました。脱炭素社会やSDGsの実現が求められる中、当社は地中熱利用を柱に持続可能な地域の発展を支えていきたいという考えのもとで取り組んでいます」と萩原社長は語ります。


◆地中熱設備の普及のみならず顧客のニーズ合ったより良い提案◆


これまでの経験等を踏まえ、地中熱利用を広める為に必要な事を聞くと、「顧客のニーズに合ったより良い提案を行っていくことが大切だと考えています」と萩原社長。

その一端が垣間見えるのが、オール電化が進む給食センターへの提案。調理や洗浄で大量に使うお湯を沸かすため多くの電力が必要となりますが、同社ではこの電力使用量を抑制 させるため電気のピークシフトを行い、夜間電力を使うことで電気代を削減する提案等を 行うなどしています。

「当社では地中熱利用の普及を図っていますが、地中熱利用システム単体を普及させる だけでなく、ユーザーの実情に合わせ、その他エネルギーとの組み合わせ…例えば、 電気代が高騰する現状等を踏まえた場合、比較的安価に発電出来るガス発電設備と組み合わせた提案等ユーザーが満足できるプランを提示していく事が大切だと考えています」と萩原社長は語ります。

また、地中熱利用は導入コストが高いこと等が導入の阻害要因として挙げられますが、この課題について「どうやったらコストを下げられるのかの努力は引き続き必要だと思って います」と述べ、低コスト化に向けた技術開発は勿論、スムーズな施工を実現するためにも同業等との仲間づくりの大切さも説きます。加えて、設置後のメンテナンスについても柔軟に対応し、顧客ニーズに応えていく重要性を指摘しています。

地域での地中熱利用の推進を図る同社は、県内での地中熱利用の普及啓発を行っている 「山梨県地中熱利用推進協議会」を発足させ、「啓発活動を通じて地域の機運を高めていくことが大切だと思っています」と話します。その一方で、「急速に広がるものは直ぐに廃れてしまう事があるので、地道に啓発し、定着させていく方が良いと思っています」と語り、焦らず地域に根付かせ、地域の脱炭素化を実現する適切な設計の地中熱利用設備を広めていく考えを示します。

こうしたこれまでの同社の緻密な取り組みは、行政機関にも認められ、令和3年10月15日付で、山梨県が主導し県内市町村が参加する再生可能エネルギ―関連の「山梨県:ストップ温暖化やまなし会議」(※)の組織にも企業としては初めて加入しています。

※会議の宣言:参画する自治体、団体、民間企業等がパートナーシップを構築しながら、2050年までに、県内の温室効果ガス排出量実質ゼロの達成に向けて、それどれが自らの活動に於いて、地球温暖化対策に取組む事を宣言します。


◆地域社会への貢献と環境への配慮などを目的に社内にSDGs委員会設置◆


持続可能な地域づくりに地中熱で貢献していく考えの同社では対外的なことだけでなく、社内でもSDGsに関する取り組みを展開しています。2022年には社内にSDGs委員会を発足しており、各部署から担当を任命し、地域社会への貢献と環境への配慮などを目的に、具体的な取り組みを企画・提案する組織として社内外に向けて活動していく考えだとしています。その成果は、同社のホームページ(https://www.hagibor.co.jp/ )でも随時紹介していくとしています。

また、SDGsに関連した動向としては今年2月に60社以上が出展した「YAMANASI SDGs FORUM 2023」にも出展し、地中熱事業について紹介しています。

取材の最期に萩原社長は、「当社は山梨県内の温泉・地下水開発や地盤・土質調査を中心に、地域に根づき地域を愛し、地域の地下特性と環境を誰より考え貢献してきたと自負しています。これまでの多種多様の経験は、常に試行錯誤を重ね、時には難題に苦しみ、時には  お客様と共に喜び、発想力・提案力・技術力を社員一丸となって一歩一歩高めてきました。日々変化していく地球環境に対応し、時代とともに進化する技術と顧客ニーズをこれからも高い品質で提供できるよう、当社は『水と大地と環境の総合コンサルタント』として今後も邁進していきます」と述べ、「SDGsの実現に向けた再生利用可能なエネルギーの活用法を提供し、地元に貢献していきたいと思っています」と今後の意気込みを語ってくれました。

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地中熱利用の課題として熱交換用の井戸掘削など設備導入に関連するコストが課題と言われ、その土地の地中が実際にどの程度熱交換可能なのかを調べる熱応答試験(サーマルレスポンステスト、TRT)も課題の1つとされています。こうした中、日さく(さいたま市大宮区桜木町4-199-3、若林直樹社長)は、そのTRTのコスト低減に向け、「地質調査孔を用いた熱応答試験」の研究開発を進めており、注目されます。


◆通常の地盤調査で利用する地質調査孔◆


この研究開発は、日さくがPEC(埼玉県桶川市加納873-2、遠藤康之社長)とともに進めているものです。

地中熱利用のうち、地下に埋設した管に不凍液や水を循環させて熱交換するクローズドシステムの検討する際、事前にTRTを行い、地盤の熱伝導率や採熱可能量を把握したうえで、必要な採熱施設の検討を行うことが望ましいとされています。

しかし、従来のTRTでは、Φ150mm以上のTRT専用の採熱孔を掘削する必要があり、装置が大掛かりになるため、試験1回あたりの費用がかかるのが普及における課題とされています。

こうしたことから、日さくでは通常の地盤調査で行われているΦ66mmの地質調査孔に着目。


◆地質調査孔で熱応答試験行うために多点温度計と小型加熱器を利用◆


地質調査孔でTRTを行えるように、小型の加熱装置と多点温度計を用意し、埼玉県桶川市における深度10mの調査孔を用いて、2種類のTRTを行い、その比較を行いました。

試験結果によると、埼玉県桶川市の深度10m孔において、0.5kWの加熱を24時間行い、深度0.5mごとに地下水温変化を計測したところ、地層全体の平均値(相加平均)として、1.35 W/(m・℃)を得たとしています。各地層の見かけ熱伝導率は0.76~1.98W/(m・℃)となり、ローム層・粘土層で小さく、砂層で高くなる傾向を示したとしています。


◆従来のTRTと同等の結果◆


なお、同一敷地内で深度10m、掘削孔150mmの採熱孔を用いて同地において加熱量50W/mの従来型TRTを行ったところ、見かけ熱伝導率λ=1.79 W/(m・℃)を得ています。

この結果から同社では、従来型(Φ150mm)と地質調査孔(Φ66mm)の2孔において深度10mのTRTを行い、おおむね同等の結果を得ることができたとしています。

この研究開発を進めている日さく技術開発本部の高橋直人氏は、「地質調査用の地質調査孔をTRTが行えれば、TRTのコストを大幅に抑えることができます。このことが、地中熱採用・普及の一助になるよう、努力していきたいと考えています」と話しています。

この結果を踏まえ、地質条件の異なるほかの地域でも地質調査孔によるTRTを実施する方針としています。複数地域で従来TRTと同等の結果が出れば、地中熱利用の普及を促進する手法となることから、今後の成果も注目されそうです。

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地中熱はじめ再生可能エネルギー熱の用途には空調のほか、雪国では「融雪」にも利用できます。この再生可能エネルギー熱を利用した融雪システムのうち、興和(新潟市中央区新光町6-1、齋藤浩之社長)が販売している「ヒートパイプ融雪システム」は、動力を必要としないエコな融雪システムとして近年、注目が高まっています。持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みが重視される中、動力がいらない融雪システムとは何か、紹介します。(エコビジネスライター・名古屋悟)


◆ヒートパイプ内に封入した冷媒が地下で熱を奪い、地表で雪を溶かす◆


興和のヒートパイプ融雪システムは、地中熱や温泉熱、下水熱等の再生可能エネルギー熱を利用して融雪するものです。

ヒートパイプは、柔軟で折り曲げることが可能な外径26.5 mmのステンレス製のパイプで、作動液として冷媒の「R134a」が封入されています。このヒートパイプは、例えば地中熱を利用する場合、地中側に垂直に埋設し、地表近くでL字に曲げて路面下に水平に敷設します。

融雪の仕組みは、地中側のヒートパイプ内で液体だった作動液が地中の熱を奪って温まって気体となり地表部に移動します。この時、地中から奪った熱も地表部に運ばれ、路面を温めて雪等を溶かします。融雪で熱を奪われた作動液は再び液体となり、ヒートパイプ内を自然に地中側に移動します。このサイクルを繰り返すことで、動力なしで雪を溶かすことが可能になっています。地中に埋設する部分は、丈夫な防食用シースで覆うため、劣化などの懸念もありません。用途に応じて1m~24mまで製作可能となっています。


◆地中熱、下水熱、温泉熱等を熱源に融雪◆


年間を通じて一定の温度を保つ地中熱を利用する場合、15~20mのボーリング孔にヒートパイプを挿入し、地中熱エネルギーを舗装まで運んで融雪を行います。

冬期でも温かい生活排水等が流れている下水道管の下水熱を利用する場合、下水管の周囲にヒートパイプを沿わせるように配置し、下水熱を地表に伝え融雪を行います。

温泉熱を利用する場合、温泉排湯が流れる側溝などからヒートパイプを用いて熱を集め、路面に伝えて融雪を行います。

地中熱や下水熱では1日30cm程度の降雪まで対応でき、温泉熱を利用した場合はさらに多い降雪でも対応が可能だということです。


◆新潟県はじめ雪国における道路融雪等で導入進む◆


これらの融雪システムは、興和が所在する新潟県内を中心に、北海道や青森県、秋田県、山形県、福島県、富山県、福井県、群馬県、長野県、鳥取県などの車道・歩道等で導入されています。

再生可能エネルギー熱を利用する点、動力不要な点から温室効果ガスの排出抑制の効果の高さが注目されると同時に、持続可能な開発目標(SDGs)が叫ばれる世の中でヒートパイプ融雪システムは今後、一層注目すべき技術と言えそうです。

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◆ベトナムの鶏肉加工工場で実証した冷廃水の熱利用◆


ベトナムで実証した工業用水中の未利用熱の有効活用によるクリーン冷暖房システムを今後、陸上養殖など多様な用途で展開していきたいと思っています――。

ベトナムでの実証実験を行ってきたアサノ大成基礎エンジニアリング(東京都台東区北上野2-8-7、遠藤一郎社長)の志賀剛国際推進室長はこう語ります。

「ベトナムにおける工業用水中の未利用熱の有効活用によるクリーン冷暖房システム」は、2021年5月にアジア開発銀行の高度技術信託基金の技術イノベーション実証試験プロジェクトに採択されたもの。

ジオシステム(東京都練馬区関町北3-39-17、高杉真司社長)ほか3社と連携し、ベトナムでの樹脂製熱交換器(タンク式G-HEX)を活用した未利用熱の有効利用システムを用いた技術。


◆従来冷却システムに比べ約20%のエネルギー使用量削減◆


鶏肉加工工場では、工業用水を使って温水、冷水を作って工場内で利用しており、従来、温水はボイラーで80℃ほどに加温、冷水はチラーで0℃近くに冷却して使用していましたが、工業用水の水温は25℃~30℃近くあり、冷水を作るのに年間で日本円にして500万円ほどかかっていました。

この実証試験では、冷廃水に着目。チラーで冷却した水は鶏肉の洗浄等に使用され、そのまま廃水となっていましたが、廃水時もまだ3℃程の冷水であり、この冷廃水を工業用水の冷却に熱源として再利用することで冷却時のコスト低減を図る考えの下、冷廃水をタンクに貯め、その中に沈めた「G-HEX」で冷熱を回収し、循環水をプレート式熱交換器に送り、プレート式熱交換器で冷やされた工業用水をチラーで冷却します。

鶏肉加工工場での一年間の実証の結果、チラーのみで冷水を作るのに比べ、約20%の電力使用量の削減となり、冷廃水を熱源とするシステムの導入費は約5年で回収できる見通しとなっており、初期投資回収が早くできる点が魅力的です。


◆樹脂製熱交換ユニットの「G-HEX」で冷廃水の熱を回収◆


このシステムで使われる「G-HEX」は、地中熱利用等で使われているポリエチレン製シート状熱交換器「G-カーペット」を利用したユニットで、タンク式やバスケット型、平板型等のユニット仕様にしたもの。「G-カーペット」は、幅0.9m× 長さ5.6mの。径6mmのポリエチレン管117本と2本のヘッダーで構成されているもので、地中熱利用等では深さ1~2mの浅層での熱交換に適しています。コンパクト、軽量、モジュール化で設置が容易で、地表水(池、川)での利用で1枚当たり6kW相当(カタログ値)の熱交換が可能となっています。

ベトナムでの実証では冷廃水に「G-HEX 」を沈めることから汚れ等の付着による熱交換効率の低下が懸念されますが、年間の実証では汚れによる能力の低下はほとんどなかったとしています。仮に汚れが付着しても「G-HEX」を廃水槽から出し、清掃するのは難しいものではないので、メンテナンス等の負担は少なくて済むのも大きなポイントとなります。

アサノ大成基礎エンジニアリングの志賀氏は、熱利用後の冷廃水にも注目しており、熱回収後も8度程度の水温であることから室内の冷房熱源としての利用も視野に入れています。

また、さらに大きな規模での運用も予定しており、研究機関と連携し、今後、実証を行っていきたいとしています。


◆注目されている陸上養殖の水温調節に展開を◆


さらに、この「ベトナムにおける工業用水中の未利用熱の有効活用によるクリーン冷暖房システム」は水産加工工場や、注目されている陸上養殖における導入も視野に入れ、関係方面との調整も進めていると言います。

陸上養殖ではエビやトラフグ、アワビ等の高級水産物の養殖が注目されていますが、水温管理も重要なポイントとなります。

この水温調節に地中熱や廃水等の未利用熱を利用することで加温も冷却も低コスト化が見込まれるほか、地中熱利用の業界では昨今、地中熱等の高度利用に関する研究の動きも出てきており、陸上養殖における地中熱、未利用熱利用の動向が注目されそうです。


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【寄稿】
◆地中熱利用促進協会 副理事長 安川香澄◆

空調や建物に関わる業種の方にはかなり浸透してきた感のある地中熱ヒートポンプですが、一般市民の認知度は依然として低いようです。筆者は全国各地で地熱エネルギーに関する講演をしておりまして、参加者からよく「家庭でも使える地熱の利用法はありませんか?」と聞かれます。そんな時は嬉々として、「地中熱ヒートポンプという方法があります」と答えますが、キョトンとされてしまったり、初めて聞いたと言われることがほとんどです。


一般市民が知らなければ、空調・建物以外の業種の方々もご存知ないわけで、これは非常に残念なことです。というのは、コロナ禍に円安、ロシアによるウクライナ侵攻という様々な要因でエネルギー価格が高騰し続ける昨今、多くの方が長期的な燃料費削減のチャンスを逃しているからです。


地中熱ヒートポンプは、わが国では空調や給湯用として、事務所や公共施設などを中心に普及してきました。一般の空調に比べ導入費が高いことが課題ですが、大きな省エネ・節電効果があるので、いずれ導入コストを回収した後は燃料費が下がることが魅力です。とは言え、これらの建物は通常日中しか使われず、空調運転時間が8時間程度に留まるので、コスト回収に長い年数がかかります。それに比べて、24時間温度管理が必要な施設ならば、コスト回収期間は大幅に短縮されます。


24時間空調というとまず思い浮かぶのは、病院や介護施設などでしょう。それらの施設では、すでに地中熱ヒートポンプの導入事例があります。しかし、温度管理が必要なのは人間用の空調だけではありません。今回、アイディアとしてご紹介したいのは、醸造業、発酵業、養殖漁業といった産業への応用です。

 温度管理による発酵調整で、明治以降に時間短縮された味噌づくり

 (http://gourmet-note.jp/posts/4058 より転載)

 

 伝統産業の印象が強い醸造・発酵業ですが、現在では伝統製法を守りつつ、衛生環境に留意した最新設備が導入されている場合が多いようです。そして発酵プロセスや貯蔵の目的で温度を一定に保つため、ボイラーや空調が使われます。温度管理の大切さは養殖漁業にも共通で、幼魚の生育に合わせて、最適な水温に保つよう管理しています。世界的に海洋資源の保護が叫ばれ、天然の漁業が難しくなる中、養殖漁業は産業として急成長しており、中でも温度管理が容易でユニット化も可能な内陸養殖の割合が増えるとの見通しもあります。

 世界の漁業生産量の推移:20年間ほぼ一定の漁船漁業と加速的に増加する養殖漁業

 (https://sustainablejapan.jp/2015/08/04/fishery-in-japan/17618 より転載)

 

さて、これらの業種で必要な温度は、極端に高温や低温ではなく、常温よりも5℃~10℃程度高めか低めの温度。これは、地中熱ヒートポンプが最も得意とし、省エネ・節電効果が高い温度範囲です。ヒートポンプの効率が良く、しかも設備利用率が極めて高いのですから、結果的にコスト回収年数が短縮され、燃料費削減が早く実現するはずです。


食品分野では既に導入例があり、食品工場の温度管理とともに、野菜の加工工程やジャムの製造工程に、地中熱ヒートポンプで製造された冷温水が使われています。また農業分野では、温室栽培への地中熱ヒートポンプの活用が実証的に行われています。今後は、醸造・発酵業や養殖漁業などに活用してはどうでしょううか。加温だけでなく、貯蔵用の冷熱として利用できる点も、地中熱ヒートポンプの魅力の一つです。

 

 地中熱ヒートポンプで製造された冷温水を利用したジャム製造

 (https://www.ecomisawa.com/constructionexample.html より転載)

 

もう20年も前のこと、仲間7人で造り酒屋を見学した際、お金を出し合って3年吟醸という高価な酒を購入し、味見したことがあります。あまりの美味しさに、皆「ふゎー」「ほぉー」と漏らすばかりで、誰も感想らしい感想を述べません。確か500mlで9000円もしましたが、それでも3年間の冷蔵費に対して赤字なのだそうで、店主によれば「もっと安い酒で大量に稼いでいるから、この酒は採算度外視でのお客様へのサービス。造れば造るほど赤字になるから、数は造らない」とのこと。店主が指さす大型冷蔵庫は、夏にはカンカン照りになる庭先に置かれています。地中熱ヒートポンプで冷蔵すれば電気代を大幅節約できて赤字が解消でき、もっとたくさん飲めるようになるのに、と歯噛みしたものでした。

 

 

 思い出の造り酒屋さん

 (https://www.kiritsukuba.co.jp/ 浦里酒造店のギャラリー?/ より転載)

 

 ところで、さまざまな業種の方々に地中熱ヒートポンプを知ってもらうためには、異業種交流会が効果的ではないかと考えています。先行事例がないと納得してくださらない方が多いわが国ですが、中には、世界初だからこそチャレンジしたいという方もきっといらっしゃるはず。そもそも、新たな挑戦を続けてきたからこそ時代に打ち勝ってきた伝統産業であり、工夫を重ねるからこそ急成長する養殖漁業です。そんな方に、ぜひ同業者に先駆けて地中熱ヒートポンプによる新ブランドを立ち上げていただきたいのです。


地中熱無添加味噌、地中熱絹ごし豆腐、地中熱大粒納豆、地中熱濃口醤油、地中熱純米吟醸酒、地中熱麦酒、地中熱葡萄酒。地中熱鯵、地中熱平目、地中熱鯛、地中熱熟れ鮨。地球の熱を上手に利用した高付加価値の食品として、いつの日かきっと食卓をにぎわすことになるでしょう。