脱炭素社会実現の切り札「再エネ熱」を生かすヒートポンプを手掛けて40周年

ゼネラルヒートポンプ工業代表取締役・柴芳郎氏 記念インタビュー


地中熱をはじめとした再生可能エネルギー熱(再エネ熱)のヒートポンプ利用に積極的に取り組んできたゼネラルヒートポンプ工業株式会社(名古屋市中村区名駅2-45-14東進名駅ビル7F、代表取締役:柴芳郎)が2024年11月に創業40周年を迎えました。2050年ゼロカーボンの実現に向け、再生可能エネルギーの利用やさらなる省エネ化に大きな関心が集まっている中、再エネ熱や未利用熱を効果的に利用し、一次エネルギー消費量のさらなる削減に効果を発揮するヒートポンプへの期待も高まっています。再エネ熱利用における同社のこれまでの取り組みやヒートポンプの役割、今後の展望等について同社代表取締役・柴芳郎氏(写真)に話を聞きました。(エコビジネスライター・名古屋悟)

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◆排熱回収型ヒートポンプの開発から40年◆

――再エネ熱のヒートポンプ利用への関心が高まっている中、創業40周年おめでとうございます。

「2024年11月におかげさまで創業40周年を迎えました。1984年に冷房と給湯を同時に行う排熱回収型ヒートポンプの先駆者である創業者・柴芳富が創業して以来、業務用に対応した地下水熱や地中熱、空気熱等を熱源とするヒートポンプを多数製作し、世に送り出してきました。

2000年には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)国際共同研究事業に参画し、中国長春市に地中熱交換器を用いたクローズドループの地中熱ヒートポンプを初めて納めて以来、国内の多くの施設でクローズドループの地中熱ヒートポンプも導入頂いています。

年間を通して温度差が少なく、夏は外気より冷たく、冬は外気より温かい地中や地下水の温度を冷暖房などの熱源としてヒートポンプで必要な温度にコントロールして利用するシステムは、再エネ熱利用であると同時に消費電力を大幅に低減する省エネシステムになります。また、使用後に捨てていた排熱を再利用する際にもヒートポンプはその熱を増幅させて利用することができ、無駄のないシステムを構築することができます。

地中熱や地下水熱は冷暖房、給湯、消融雪に、温泉熱などは給湯や加温、床暖房、消融雪などに利用でき、いずれも従来のシステムよりも化石資源由来のエネルギー消費量がないまたはとても少なく、温室効果ガス(CO2)排出量を大幅に抑制することができます。

事務所、庁舎、病院、福祉施設、教育施設、工場、宿泊施設等に加え、近年では農業施設等での利用も注目されており、今後も幅広い分野で役立つものと考えています」

◆2024年度省エネ大賞を共同で受賞◆

――2024年度省エネ大賞では、省エネ事例部門資源エネルギー庁長官賞(ZEB/ZEH分野)を受賞しましたが、これも再生可能エネルギーを活用した事例ですね。

「株式会社日建設計及び常盤工業株式会社、ピーエス株式会社、富士エネルギー株式会社とともに取り組んだ『自然エネルギーを活用したパッシブ型ZEBオフィスの取り組み』が評価されました。

この取り組みは、常盤工業株式会社(静岡県浜松市)が本社ビル建て替え(上写真:ゼネラルヒートポンプ工業㈱提供)に際し、設計会社等から知見を得ながら徹底した自然熱利用や空調設計等により、地産地消型のZEBを目指し達成した省エネの取り組みです。

『除湿型放射冷暖房による高効率な空調システム』や『放射冷暖房機とRC躯体蓄熱の相乗効果による室内温度の安定化』、『豊富な井水、晴天率の高い太陽熱を活用した高効率熱源システム』などを効果的に組み合わせたもので、汎用技術を組合せることで大きな省エネ効果を創出した事例になります。

1次エネルギー削減の実績は、コンセントなどを除き基準の73%減となる339MJ/㎡年。太陽光込みでは-104%となり、完全『ZEB』を達成しています。

当社は井水を利用するヒートポンプシステム(下写真:ゼネラルヒートポンプ工業㈱提供)で参画していますが、ヒートポンプはピーク時のみに使用する設計とし、通常はフリークーリング(ヒートポンプを動かさずに井水の冷熱で冷房)およびフリーヒーティング(ヒートポンプを動かさずに太陽熱で暖房)をベースとしていることで大きな省エネ効果を発揮しています。

こちらの施設では、見学会などZEB普及拡大の活動も積極的に行っている点が特長となっています。

このほかにも省エネ大賞では、2011年度には「洗浄工程用ヒートポンプ」で資源エネルギー庁長官賞(産業分野)、2017年度には「透析熱回収ヒートポンプ」(当社・株式会社ウォーターテクノカサイ・日機装株式会社)で省エネルギーセンター会長賞(製品・ビジネスモデル部門)を受賞しています。

省エネ大賞以外にも文部科学大臣表彰などさまざまな賞を受賞させていただいています」

※受賞歴は同社HPの以下URLを参照。

https://www.zeneral.co.jp/corporateinfo/jyusyoureki.html

◆多様な熱源を生かすノウハウ◆

――これまで再エネ熱ヒートポンプ利用で多くの実績を残されています。

「当社では創業当初から手がけている排熱や近年、導入が進む地中熱や地下水熱だけでなく、温泉排湯熱、下水熱、空気熱、さらには人工透析の透析熱、産業廃棄物の最終処分場における浸出水の熱のなど多様な熱源を生かしたシステムを手掛けてきた実績があります。

例えば透析熱の事例は、2018年に竣工したクリニックに導入したもので、人工透析治療で使用された透析排液やRO濃縮水を熱源とした水冷式ヒートポンプとインバータ技術を駆使してRO原水を加温することで、従来設備(電気ヒーター等)の稼働率を削減し、大きな節電効果・CO₂削減を実現するシステムになっています。今まで使わずに捨てていたエネルギーを生かして一層の省エネを実現することができる事例です。

当社では、1984年創業から2024年度までに国内外で1000件以上の納入実績があり、現在では、地中熱・温泉など再エネ熱利用分野での業務用ヒートポンプで業界をリードしていると自負しています。

当社ホームページにて納入実績(https://www.zeneral.co.jp/nounyuu_jirei )も紹介していますので、ご参考にしていただければ幸いです」

◆ZEB達成に役立つ再エネ熱利用ヒートポンプ◆

――新築の建築物ではZEB化を目指す動きも加速しています。ZEB達成において再生可能エネルギー熱のヒートポンプ利用の役割も今後さらに大きくなると考えますが。

「近年は、政府の2050年ゼロカーボンの目標達成に向け、ZEB等の普及拡大が急務となっていますが、ZEB達成において地中熱はじめとした再エネ熱、未利用熱を利用するヒートポンプシステムは、一次エネルギー消費量削減の大きなひと押しとなるものです。

立地する地域で最も効果的な熱源を選択し、組み合わせることで効果的なシステムを構築することができます。

当社では先ほど省エネ大賞で紹介したケースのほかにも、帯水層蓄熱システムに太陽熱などを組み合わせてZEBを達成した事例など実績を多数有しています。ZEBを目指している方はぜひご相談ください。

なお、当社ではヒートポンプシステムの運転状況や消費した電力量、温度表示などをリアルタイムで把握できる熱源制御・監視システム『ZEOS®(Zeneral Energy Operation/Observation System)』(https://www.zeneral.co.jp/ZEOSr )も開発し、提供しています。エネルギーの『見える化』を実現するもので、デマンド制御やスケジュール機能などが可能で、省エネルギー・省コスト効果を助長します。ZEBにおける実運転において運転管理の効率化にもつながるシステムになっています」

◆さらなる認知度向上が課題…◆

――効果の大きな再生可能エネルギー熱利用ですが、さらなる普及に向けて必要なことと感じていることはありますか?

「業界団体の積極的な啓発活動があり、地方公共団体や建築設計の業界における知名度は飛躍的に伸びたと感じています。このため、庁舎やZEB達成を目指す建物などにおいて再生可能エネルギー熱の導入が増えてきています。

一方でエンドユーザーとなる方々にはいまだにあまり知られていないのが実情だと感じており、積極的な普及啓発活動は今後も必要だと考えています。

手前みそになりますが、四半世紀にわたり地中熱、温泉熱、太陽熱などの利用方法を研究してきたノウハウを生かし、書籍『再生可能エネルギー熱』(幻冬舎:著者・柴芳郎)を昨年6月に上梓しました。発電よりも効率的な熱利用は社会に大きなメリットを生み、省エネルギーと省コストに大きく貢献できること示しており、再生可能エネルギー熱の重要性と有効性を知っていただくことで、ネットゼロエネルギー・ネットゼロカーボンにつながる一冊になっていると思います。

全国の書店(三省堂/丸善/ジュンク堂/紀伊国屋等)で購入できるほか、Amazon(https://www.amazon.co.jp/%E5%86%8D%E7%94%9F%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E7%86%B1-RENEWABLE-HEAT-%E6%9F%B4-%E8%8A%B3%E9%83%8E/dp/4344948041?source=ps-sl-shoppingads-lpcontext&ref_=fplfs&ref_=fplfs&psc=1&smid=AN1VRQENFRJN5)でも購入可能ですので、ぜひご一読いただき、再生可能エネルギー熱のヒートポンプ利用について知っていただければと思っています」

◆新年度には新製品の販売も開始へ◆

――これからに向けた抱負をお聞かせください。

「省エネルギーによるエネルギー自給率向上という日本の課題に加えて、地球温暖化防止という世界の課題を背景に、業務・産業分野において、多種多様な未利用熱源の有効活用が求められています。こうした課題に対し、これからも当社技術が貢献できるものと確信しています。

ヒートポンプシステムは、冷熱や温熱を作るための生活に欠かせない技術であるとともに、再生可能エネルギー熱や未利用熱は今後の地球環境保護のためにも大切な技術です。それらを組み合わせたヒートポンプシステムは将来の可能性に満ちています。これからもさらなる省エネルギーと利便性を追求し、環境価値の高い製品を提供していきます。

2025年度には、オゾン層を破壊せず地球温暖化係数(GEP)の低いハイドロフルオロオレフィン(HFO)系の次世代低GWP冷媒であるR513Aを使用した高温型水冷式ヒートポンプ、従来のR410Aに比べてGWPが1/3以下となるR32を使用した水冷式ビル用マルチも販売を開始する予定です。

ヒートポンプのパイオニアとして、ヒートポンプの専業メーカーとして、引き続き『技術革新・環境価値・社会貢献』を経営理念に、人と地球に優しい製品開発に努めてまいります」

――お忙しい中、ありがとうございました。御社が展開する再エネ熱を利用したヒートポンプシステムのさらなる普及が進むことを願っています。 (了)

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