【2026年夏特集④】環境と防災融合した山梨県甲斐市の取り組み~避難場所指定の小学校3校の体育館に「災害用井戸×地中熱利用空調システム」を導入

地域の防災力と環境負荷低減を同時に高める取り組みとして、山梨県甲斐市では2025年度に避難場所としての指定された市立の小学校体育館3校に、「災害用井戸×地中熱利用型空調システム」の導入を行いました。本件では、単なる空調設備新設ではなく、災害対応井戸を主として日常利用と巧みに結びつけた先進的モデルとして、今回ご紹介します。(株式会社ハギ・ボー環境事業部部長・中澤俊也)

◆井戸を災害時専用にせず日常空調熱源として利用◆

甲斐市では、災害時に圧倒的に不足する生活用水を避難所となる施設で確保するため、井戸の設置を検討し、その井戸水を同時期に計画していた屋内運動場の空調設備に利用することを考えました。空調システムは、水冷式ヒートポンプを用いたビルマルチタイプで、その熱源として、災害時にも給水可能な井戸を利用することとしました。

体育館全体の空調負荷を井戸水だけで賄おうとすると、必要な揚水量が膨大になり現実的ではありません。そこで、災害時の想定給水量(200~250L/分)を規準に先ず水冷ヒートポンプ能力を設定し、残りの負荷を空冷ヒートポンプエアコンで補完するハイブリッド方式を採用しました。これによって環境性・経済性・防災性のバランスを最適化することができました。

最大のポイントは、井戸を「災害時専用」にしなかったことです。非常用設備は、使われない期間が長いほど劣化や故障のリスクが高まります。今回のシステムでは、日常的に空調の熱源として井戸水を利用することで、揚水設備の稼働状況を常に把握でき、維持管理が自然と行われる仕組みになっています。いざという時に確実に機能する“生きた防災設備”としての価値が生まれました。

さらに、井戸を空調に活用することで、設置費用の費用対効果が大きく向上した点も見逃せません。災害用井戸は単体では投資回収が難しい設備ですが、空調の熱源として日常利用することで、環境負荷の低減と運用コストの抑制に寄与し、導入の合理性が高まりました。

◆甲斐市立竜王北小学校の設備概要◆

3校のうちの1校「甲斐市立竜王北小学校」の具体的な設備内容を以下に記します。

【空調対象床面積】メインアリーナ 980㎡ 、ステージ90㎡

【空調設備】

〇空冷方式シングルタイプヒートポンプ 10hp×6 (室内機・ 10馬力×6)

〇水冷ビルマルチタイプヒートポンプ 18hp×1 (室内機・8馬力×3)

〇空調用搬送ファン : 12台 風量 1970㎥/時(気流の到達距離及び、体感温度の向上のため)

【井戸設備】

〇口径150㎜、深度180m、井戸ポンプ11.0kW

◆県内外から視察も多数◆

近年の猛暑を背景に、文部科学省は学校体育館への空調設置を補助金で後押ししています。今回の取り組みは、この国の方針とも整合させながら、地域の防災力を高める独自の価値を付加した点で、他自治体にも広く参考となるモデルケースとなり得ます。今年5月には「にいがた災害用井戸普及協会」様や、県内の都留市が視察にみえられました。甲斐市では、災害用井戸の配置計画との協調を図りながら、システムの運用実績を検証していくとのことでした。

「環境技術と防災の融合」。その実践例として、この地中熱利用システムは、持続可能な地域づくりの新たな方向性を示しています。

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