公共施設での地中熱利用が進む中、2017年11月に業務を開始した埼玉県の大宮警察署新庁舎(下写真:写真提供:埼玉県警察本部)では地中熱利用ヒートポンプシステムが導入されています。公共施設関係では市役所庁舎や消防署などでの導入例はありますが、警察関係では初の導入事例(ECO SEED調べ)として注目。大宮警察署新庁舎に地中熱ヒートポンプシステムの導入を進めた埼玉県警察本部総務部財務局施設課を訪ね、施設の概要や今後について取材しました。(エコビジネスライター:名古屋悟)
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◆24時間365日稼動している警察署…光熱費の削減が課題
大宮警察署は埼玉県内最大のターミナル大宮駅があり、交通の要所でもあるさいたま市大宮区等を管轄しています。新庁舎は、旧庁舎から約3km南方、さいたま新都心駅東側の産業道路沿いに建設されています。7階建ての庁舎棟は、延べ床面積1万2,140㎡。現場鑑識活動で資料を採取する鑑識課とその資料を鑑定する科学捜査研究所を同一庁舎に配置した点でも注目されています。
県民を守るために24時間365日休むことなく稼動している警察署では、光熱費の削減が課題の1つとなっており、省エネや環境対策も重要になってきています。
県警ではこれまで省エネや環境対策として太陽光発電やトイレ用水としての雨水利用システム等の導入等を進め、大宮警察署でも15kWの太陽光発電のほか、トイレ用に200tの雨水利用システムなどを導入していますが、新たな施策として県の推進する新エネルギー政策や環境対策に基づき、新たな再生可能エネルギーとして地中熱利用システムを導入しました。
◆全体空調の熱源の1つとして100mボアホール14本と水冷式HPで整備
地中熱は庁舎の全体空調の熱源の1つとして利用しており、100mのボアホール14本を熱源井とし、水冷式ヒートポンプ(冷房能力:69.8kW、暖房能力73.8kW、写真提供:埼玉県警察本部)を介して庁舎の冷暖房を行っています。全体で900kWの空調システムのベースとして使用することで電力消費量や温室効果ガスの削減を目指しており、既存システムに比べ、約30%の温室効果ガス削減等が可能となっています。
◆埼玉県内で地中熱HP導入した施設を視察するなどして決定
地中熱利用システムの導入にあたっては、省エネ技術を探す中、同じさいたま市内で地中熱ヒートポンプシステムの導入事例があったことから検討を開始。東部地域振興ふれあい拠点施設「ふれあいキューブ」(春日部市)や西部地域振興ふれあい拠点施設「ウェスタ川越」など県内で地中熱利用ヒートポンプシステムを導入している施設を視察するなどした上で、大宮警察署新庁舎への導入が決まったということです。
今後について、大宮警察署新庁舎で導入された地中熱利用ヒートポンプシステムの効果などを検証し、ほかの庁舎建て替え等で可能性があれば導入していきたい考えとしています。
◆地中熱普及拡大へ県挙げて取り組み盛んな埼玉県
なお、埼玉県では、次世代住宅産業プロジェクトにおいて高効率地中熱ヒートポンプシステムの開発を進めたほか、県独自の補助金「分散型エネルギー利活用設備整備費補助金」(事業者向け)や「住宅用省エネ設備導入支援事業補助金」(一般住宅向け)、地中熱利用の基礎データである「地中熱ポテンシャルマップ」の公開などを通じて地中熱利用システムの普及拡大を図っており、近年、地中熱利用システムの導入件数が伸びています。こうした環境下にある埼玉県において、大宮警察署新庁舎を皮切りにほかの警察庁舎や街々にある交番などでも地中熱利用が進むか今後の展開が注目されそうです。
※この記事はECO SEED(代表 名古屋悟)が2019年6月3日に契約者に配信した電子媒体「Geo Value」Vol.77に掲載された記事を一部加工して掲載したものです。
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