【2025夏特集①】ZEBを目指すオーナーにおすすめする「地中熱」

◆ZEBリーディングオーナー登録の15%で地中熱利用設備導入◆

筆者:エコビジネスライター・名古屋悟(ECO SEED代表)

「広報『地中熱』」では2025年夏も、地中熱普及に向けた話題や取り組み事例などを紹介していきたいと思っています。温室効果ガスの排出抑制が世界的な課題となっている中、筆者(ECO SEED代表・名古屋悟)は、2011年頃から再生可能エネルギーの1つである「地中熱」に注目して取材をしています。太陽光発電など再生可能エネルギー電力利用に比べると一般的な知名度はいまだに低いままであるとともに導入時のコストがかかる点などが課題となっていますが、「土地があれば基本的にどこでも使える」、「日中や夜間など時間に左右されない」、「天候に左右されない」という汎用性の高さは、その他再生可能エネルギーに比べても大きな優位性があると考えています。この「地中熱」を生かせるものとして、筆者は近年「ネット・ゼロ・エネルギービル」(ZEB)に注目しています。(エコビジネスライター・名古屋悟)

※地下水の熱利用、帯水層蓄熱利用システムなども地中熱利用に含みます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◆ネット・ゼロ・エネルギービル(ZEB)◆

筆者が「地中熱利用」で注目しているZEBは、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物として関心が高まっています。

建築物のエネルギー使用量の削減に向けては、2017年4月に延べ面積2,000㎡以上の新築非住宅建築物等に対して省エネルギー基準の適合が義務化され、2025年4月には原則全ての新築・増改築される建築物で、省エネ基準への適合が義務化されています。省エネ基準を満たさない建築物は確認申請が通らなくなりますが、この省エネ基準適合義務化よりも一段レベルの高いZEB化が今後の大きな焦点になります。実際、2030年度以降に新築建築物については、ZEBレベルの省エネ性能の確保を目指し、基準の見直しが進められる見込みになっています。

建物内で人が活動している限り、エネルギー消費量を完全にゼロにすることは難しいですが、消エネ対策でエネルギー消費量を減らすことと、再生可能エネルギーなどで使う分のエネルギーを創出することを組み合わせることで、エネルギー消費量を正味(ネット)でゼロにすることができます。

◆国のZEB支援事業も◆

国でも「建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業」(イメージ図は環境省の同事業資料より)などの補助事業を設けて、ZEBの普及拡大を後押ししています。

◆夏は外気より冷たく、冬は外気より温かい「地中熱」を冷暖房熱源として利用することでエネルギー消費量削減に貢献◆

この「ZEB」を実現するうえで、「地中熱」は大きな役割を果たすと考えられています。

「地中熱」は年間を通して安定した熱エネルギーで、夏は外気温よりも冷たく、冬は外気温より温かいのが特徴で、冷暖房などに利用することでエネルギー消費量の大幅な削減が期待できます。地中熱は空調(冷暖房)の熱源として利用されています。

一般的に普及しているエアコンは空気を熱源としていますが、夏は30℃以上の外気温を熱源に冷房を、冬は10℃以下の外気温を熱源に暖房を行いますが、年間を通して温度が安定している地中熱は、例えば東京では平均17℃とされており、冬に外気よりはるかに温かい地中熱を利用すれば部屋を暖めるための電力消費量が少なく済みますし、夏に外気よりはるかに冷たい地中熱を熱源にすれば部屋を冷やすのに必要な電力消費量を減らすことができます。

地中熱利用によって、一般的に20~50%程度のエネルギー削減効果が見込まれるとされており、ZEB実現に向けて地中熱利用が大きな後押しとなることが期待できます。

◆公共建築物のZEBリーディングオーナー登録では約40%で地中熱利用◆

実際に、すでに「ZEB」を実現したケースでも地中熱利用は進み始めています。

ZEBの導入事例やZEB導入に向けた計画、目標などを一般に公表する先導的な建築物のオーナーを登録するZEBリーディングオーナー登録制度によると、2022年7月現在で460件の建築物がZEBリーディングオーナーとして登録されていますが、このうち約15%あたる67件で地中熱利用設備が導入されているとされています。

とりわけ公共建築物では地中熱利用が顕著で、2022年7月現在でZEBリーディングオーナーに登録されている公共建築物49件のうち40%強の20件で地中熱利用が進められているとされています。

◆取材で積雪寒冷地でのZEB等の事例も◆

ECO SEEDで取材したケースでも、「積雪寒冷地域で年『ZEB』実現した高効率帯水層蓄熱システムを柱に面的利用の技術開発へ~日本地下水開発(株)」(https://geovalue-plus.themedia.jp/posts/55479406)、「『地下水熱』等でZEB実現~かまぼこ老舗の鈴廣蒲鉾本店」(https://geovalue-plus.themedia.jp/posts/4400924)などの事例があります。

ZEBが広まる中で、ZEBにおける地中熱導入のノウハウを持つ設計、施工事業者も増えています。

これからZEBを目指す建築物オーナーは、土地があれば基本どこでも使え、24時間季節・天候に左右されずにエネルギー消費量の大幅な削減が期待できる地中熱の利用を考えてみてはいかがでしょうか?



(筆者紹介)環境専門紙「環境新聞」記者(2000年~2015年)を経て、2016年3月に独立開業。同年4月より土地環境電子専門紙「Geo Value」の配信を開始。一般向け地中熱広報WEB媒体「広報『地中熱』」も開設。その他、古巣「環境新聞」や「朝日新聞デジタル『SDGsACTION』などへの寄稿も手掛ける。

広報「地中熱」~地中熱のススメ Presented By ECO SEED

「使わないともったいない」けどあまり知られていない再生可能エネルギー『地中熱』を紹介します

0コメント

  • 1000 / 1000