【2025年夏特集②】SDGs時代に興和の挑戦~地中熱の『ZEB』活用と独自技術の新たな展開

地中熱は再生可能エネルギー熱の用途として空調で使うことができます。この特長を利用した『ZEB』を自社の中越支店に導入したのが株式会社興和(新潟市中央区新光町6-1、齋藤浩之社長)。持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みが重視される中、自社ビルの『ZEB化』に取り組んだ事例のほか、興和独自の地中熱の活用事例を紹介します。(エコビジネスライター・名古屋悟)

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◆地中熱を活用して積雪寒冷地で『ZEB』達成~中越支店◆

同社が『ZEB』化を目指した中越支店は、冬季には雪が降り積もる新潟県長岡市内にあります。

事務所棟(鉄骨造・地上3階建て)と倉庫棟(鉄骨造・地上2階建て)で構成された建物(建築面積約640㎡、延床面積約1,157㎡)で、『ZEB』を達成するため、高性能断熱材、Low-E複層ガラスによる外皮性能の向上を図るとともに、地中熱利用空調設備、照明のセンサー制御、DCブラシレスモーター換気扇、全熱交換器、ビルエネルギーマネジメントシステム(BEMS)導入による消費エネルギーの削減、太陽光パネルと蓄電池による創生エネルギーの確保、ヒートポンプ給湯器の導入などを組み合わせ、『ZEB』を実現。省エネ大賞(省エネ事例部門)省エネルギーセンター会長賞を設計・施工の福田組と共同受賞するなど関係各方面から高い関心を集めています。

(写真;株式会社興和中越支店)

この中で注目したいのが、同社が脱炭素化の有効手段として長年手掛けている地中熱を中越支店の『ZEB』化でも生かしている点です。

地中熱は、季節や時間、天候等の変化に左右されない再生可能エネルギーで、夏は外気より冷たく、冬は外気より温かい地中内の熱を空調の熱源として利用することで、空調のエネルギー消費量を大幅に減らすことが可能になります。

季節にも左右されない地中熱が、『ZEB』化が難しいとされる雪国での『ZEB』実現を支えています。地中熱空調設備は、一般的な空調システムに比べて約50%程度電力消費量を削減する効果があります。

また、駐車スペースにも地中熱を活用した『地中熱ヒートパイプ融雪』を導入しています。電力等のエネルギーを使わずに路面にたまった雪を溶かすことができる画期的なシステムであり、これも同社が長年注力している技術です。

◆ヒートパイプ内に封入した冷媒が地下で熱を奪い、動力なしで地表の雪を溶かす◆

同社の『ヒートパイプ融雪システム』は、地中熱や温泉熱、下水熱等の再生可能エネルギー熱を利用して融雪するものです。ヒートパイプは、柔軟で折り曲げることが可能な外径26.5 mmのステンレス製のパイプで、作動液として冷媒の「R134a」が封入されています。このヒートパイプは、例えば地中熱を利用する場合、地中側に垂直に埋設し、地表近くでL字に曲げて路面下に水平に敷設します。

(図:地中熱ヒートパイプ融雪の仕組み)

融雪の仕組みは、地中側のヒートパイプ内で液体だった作動液が地中の熱を奪って温まって気体となり地表部に移動します。この時、地中から奪った熱も地表部に運ばれ、路面を温めて雪等を溶かします。融雪で熱を奪われた作動液は再び液体となり、ヒートパイプ内を自然に地中側に移動します。このサイクルを繰り返すことで、動力なしで雪を溶かすことが可能になっています。地中に埋設する部分は、丈夫な防食用シースで覆うため、劣化などの懸念もありません。用途に応じて1m~24mまで製作可能となっています。

興和は、今年度より融雪用ヒートパイプの製作を秋田から本社のある新潟に移転し、北陸・東北エリアのみならず、北海道や西日本での販売拡大も視野に入れています。

◆地中熱以外でも、下水熱を熱源に融雪・空調に◆

興和は、冬期でも温かい生活排水等が流れている下水道管の下水熱を利用するシステムの設計・施工も行っています。下水管は地下に埋設されているため、地中熱と同様に夏は外気より冷たく、冬は温かい特長があり、特に人口が多いエリアでは、大きなポテンシャルを有しています。

興和は下水本管の管底に採熱管を設置する「管底設置型」システムの導入を進めており、本社のある新潟に留まらず、北海道、東京、大阪、福岡など、全国各地の導入に携わっています。

(下水熱の採熱システム)            

(下水熱システムでの融雪状況)

◆一次エネルギー消費量のさらなる削減の切り札である再生可能エネルギー熱利用◆

地球温暖化の進行に伴う気温上昇が顕著となる中、温室効果ガスの削減が一層求められると同時に、価格高騰が続くエネルギーの使用量削減も重要な視点となっています。こうした中、一次エネルギー消費量を大幅に下げられる地中熱や下水熱など再生可能エネルギー熱利用は今後、大きな役割を果たすと考えられ、再生可能エネルギー熱利用の技術開発、市場への導入拡大に取り組んできた興和の取り組みは一層注目を集めそうです。

※記事中の図、写真は株式会社興和提供

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